Q&A

成年後見について

成年後見制度は、判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、 人間としての尊厳が損なわれたりすることがないように、法律面や生活面で支援する身近な仕組みです。
様々な事例を用いて、成年後見制度利用に関するQ&Aを作成いたしました。
ぜひご覧ください。

質問一覧

遠方に一人で暮らしている高齢の母がいます。 最近、たくさんの着物や宝石を買って多額の借金を抱えていることが分かりました。 診断を受けたところ認知症であると言われ、その後、症状が進んでいるようです。
母名義の銀行預金の管理をしなければならず、後見制度を利用しようと考えています。
法律知識の乏しい私が、後見人になるのは不安なのですが、何かいい方法がありますか。
後見等開始の申立ての際に、後見人等の候補者について家庭裁判所に希望を伝えることができます。
しかし、家庭裁判所は、本人の状況、家族との関係、財産の状況などを総合的に検討して、 本人の生活と財産を守るために適切な人を後見人等に選任します。ですから、親族以外の、法律や福祉の専門家が後見人等に選任される場合もあります。 やはり、後見人等の選任については、事案ごとに事情が違いますのでケースバイケースであると言えます。
父の遺産はすべて母が相続しました。母は父が死んでから気落ちしたのかすっかり弱ってしまい、三回忌の法要を済ませたころに認知症であることが分かりました。その後、症状が進み私の顔も分からないようです。母は長男の兄と同居して暮らしていますが、その兄が母の預貯金の管理をしています。
最近になって、母の預貯金が勝手に使われているのではと疑われることがありました。母の今後の生活が心配なので、成年後見制度の利用を考えていますが、兄に後見人をまかせるのは不安でいっぱいです。
私が後見人になれるでしょうか。
親族が、事実上、本人の財産管理をしているときに、その管理の方法や支出などに疑問があり、財産管理の状況をはっきりさせたいという場合には、家庭裁判所の監督を受ける後見人等を選んでもらうのが良いでしょう。
しかし、後見人等を誰にするかは最終的には家庭裁判所が決めることになりますので、申立人となる親族の方の思いどおりにはならないことがあります。 ご相談によれば、お母様の判断能力が低下して、自分で財産管理ができない状態で、お兄様がお母様の預貯金を本人のためにではなく勝手に使っているとすれば、お母様の財産を守らなければなりません。そのためには、あなたが家庭裁判所に後見等開始の申立をして、後見人を選んでもらえば問題の解決につながるでしょう。
我が家の隣に一人暮らしのおばあちゃん(76歳)が住んでいます。若い頃小さい子どもを残して婚家先を出たと かで、その後ずっとひとりで生きてこられたそうです。たった一人のお兄さんも亡くなったと聞いています。
私は時々訪ねて行って様子を見ているのですが、近 頃はほとんど外出もしていないようです。
ところが、きのうは突然彼女が我が家にやってきて、通帳がなくなったと言って大騒ぎでした。久しぶりに会った彼女 は、服も汚れ、髪もバサバサでびっくりしました。話していることのつじつまが合わず、認知症が進んでいるのではないかと思います。毎日きちんと食事をしているのかどうかさえ心配です。
地域の方が、高齢者だけの家庭やひとり暮しの高齢者の方を見守っていただくことはとても大切なことですね。ご本人も心強いと思います。しかし、いくら親しくても、法律上の権限もなく、他人ができることは限られています。親切心で通帳や印鑑を預かったのに、後でご本人が物盗られ妄想になり、トラブルになる例もめずらしくありません。ご相談のケースの場合、まず、「地域包括支援センター」にご相談に行かれることをお勧めします。あなたの地域を担当する「地域包括支援センター」については、民生委員の方や、行政(役所)の高齢福祉を担当している福祉課等にお尋ねになってください。
市内に住む叔父(68歳)が交通事故にあい、命は取りとめましたが、後遺症のせいか、私の言葉もあまり理解できないようです。叔父は入院費の支払や転院手続きなどが自分でできないため、病院から後見人選任の手続きを勧められました。叔父は独身で、私(30歳)以外に親族はいません。なんとか叔父の力になりたいとは思うのですが、私はアルバイトで生活している状況です。 成年後見の申立費用は申立人が負担しなければならないと聞きましたが、鑑定費用を含めるとかなりの額になります。私にはとてもそんな余裕はありません。
このような場合、成年後見制度の利用はできないのでしょうか。
成年後見制度は、制度の利用を必要としている方の生活や財産を守る制度ですから、申立費用は本来利用者本人が負担するべきだと思います。しかし、法令上は、原則として申立本人が負担しなければなりません。(リーガルサポートは、この点につき法改正を提言しています。) いずれにしろ、申立費用が用意できないために制度が利用できないとしたら、成年後見制度の趣旨に反します。そのため、申立費用の負担ができない方のために、各市町村の成年後見制度利用支援事業や日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度などの制度があります。
先日福岡市○○区役所から、福岡市内に住む叔母(78歳)のことで連絡がありました。叔母は認知症がひどくなり、頻繁に徘徊もあり、これ以上一人暮らしは無理だというのです。施設に入所しなければならないそうですが、借家の明渡しや、施設の入所契約等のために、後見人を選んでほしいと言われました。これまでほとんど付き合いはありませんが、私の叔母のことですから、なんとか申立には協力しようと思います。
でも、後見人にはとてもなれません。専門家にお願いする方法もあるということでしたが、区役所の方の話では、叔母にはわずかな国民年金しか収入がないようです。本人の財産から後見人の報酬が払えない場合には、専門家にお願いすることはできないのですか。
後見人に親族がなることができず、専門家が後見人に選任される例は年々増え続けています。成年後見制度を利用する必要があるのに、経済的な理由で制度の利用ができないというのは大きな問題です。
この点、国の政策はまだまだ不十分ですが、助成制度としてリーガルサポートの公益信託成年後見助成基金や各市町村の成年後見制度利用支援事業による報酬助成などがありますので、報酬が払えないからといって制度の利用を諦めないでください。
私には古い家に一人で暮らしている母がいますが、認知症が進んできたようです。母と同居して介護をしたいのですが、それには私自身が銀行から融資を受け、バリアフリーの住宅にリフォームしようと考えています。
土地と建物は母の所有名義になっていますが、どのような手続きが必要でしょうか。
認知症により判断能力が不十分となった方は、契約内容を理解しひとりで契約を結ぶことは難しいと思われます。認知症が進みひとりで契約を結ぶことができない状態であれば、お母様のために家庭裁判所に申立をして後見人等を選任してもらい、後見人等がお母様のする契約に同意したり(保佐類型)、お母様に代わって(保佐又は後見類型)建築業者や銀行との間で契約をすることになるでしょう。
私は、認知症の母の成年後見人になっています。母には、父から相続した不動産があり、自宅だけでなく、土地や賃貸アパートを所有しています。
最近、建築業者から土地の有効活用と相続税対策のために、母名義でのアパート建築を勧められています。母の収入は増えて、母が借金することで相続時の節税にもなるようです。成年後見人として契約していいでしょうか。
後見人は、判断能力が不十分となった本人の生活と財産を守るために選任されるものです。本人以外の方のための後見人ではありません。将来を見越しての相続税対策は、本人の利益のためではなく相続人の利益のために行うものです。ご相談の場合、あくまでも、本人が生活をしていくうえで必要なことか、本人の利益のためになるのか、経済的なリスクはないのかなどを考慮して、慎重に検討すべきでしょう。
認知症でひとり暮らしをしている父の保佐人に選任されました。先日、父を訪ねてみると見知らぬ女性と同居しており、父はその女性と結婚するつもりだといいます。父からは何も聞かされておらず、その女性がどんな人かなど全くわかりません。保佐人として、父にその女 性と別れるように言えるのでしょうか。
親族としてお父様と女性との交際に反対であっても、あなたが保佐人として、お父様と女性を別れさせる法律上の権利はありません。また、お二人が正式に婚姻されたとしても、お父様の意思でなされたのであれば、これを取消す法律上の権限もありません。
私には親しくしている親族がありません。ひとり暮らしもだんだん億劫になってきたので、老人ホームに入りたいと思うのですが、身元引受人になってくれる人がいないと入居の契約ができないと聞きました。
後見人を選んでもらえば、後見人が身元引受人になってくれるのですか。
老人ホームに入居するときや病院に入院するときには、身元引受人(身元保証人)を求められることがあります。老人ホーム等施設側には、後見人等は身元引受人を引き受けてくれるものだとの誤解があることも多いのですが、身元引受人となることは本来後見人等の仕事ではありません。ただし、家族や親しい親族が後見人であるときは、家族や親族などの立場で、後見人が身元引受人を引き受けるのであれば、問題は生じないでしょう。しかし、ご質問のように第三者が後見人等となる場合、私たちリーガルサポートは、この身元引受人の問題を次のように考えています。
入院中の母が有料老人ホームへ移ることになりました。入居のための一時金として200万円が必要になるので、母の定期預金を解約しようとしたところ、認知症のある母の預金は子どもの私では解約できないと言われました。後見人を選任すればよいそうですが、何か月も時間がかかると聞きました。母が移るホームは私の家の近くに最近できた所で、申込みが多いようです。早く入居金を支払って契約をしたいのですが、私にはその入居金を支払って契約をしたいのですが、私にはその入居金を立て替える余裕がなくて困っています。
後見人が選任されるまで待てない場合、何かよい方法はあるのですか。
後見人等が選任されるまでには多少に時間を要します。特に後見人や保佐人を選任するにあたっては通常、医師の鑑定を必要としますので、3か月前後の期間を要してしまうこともあります。
そこで、今回のようなケースで、後見人等の選任を待っていてはお母様本人の利益を損なう場合、「審判前の保全処分」の手続きを利用することにより、預金の払い出しやホームとの契約が可能になるでしょう。
知的障がい(療育手帳B2)のある甥(22歳)のことでご相談します。
甥の両親は6年前に亡くなり、養護学校の高等部を卒業後、アルバイトを転々とし、3年前なんとか就職したのですが、甥は、この不況の影響で、先月解雇されてしまい、社宅も出なければならなくなりました。障害年金はもらっていません。 収入がなくなった彼は、親代わりの私にお金を貸してくれと言ってきましたが、私もそんなに余裕があるわけではないので断りました。
甥はサラ金7社から返済を迫られているということですが、総額が300万円もあり驚きました。このまま放っておくわけにもいかず心配です。
まず、甥の方の債務整理が必要ですね。そして、今後、甥の方が返せない借金をしないように、また毎月の生活費を計画的に使うように、成年後見制度を利用して、法律上の権限をもって、甥の方の生活を支援する後見人等を決めておく必要があります。
私たちの長男には軽い知的障がいがあります。仕事場の同僚の紹介で知り合ったという女友達と交流があり、時々呼ばれて出かけていくのですが、高額な絵画や宝石などを買わされて帰ってきます。最近ではその買い物が度重なって支払いに困ることがあるようですが、長男は買ってしまったことを後悔するでもなく、女友達との交流が続くことを期待しているようです。私たちが代わって支払うにも限界があります。
この長男のこれからの生活を守ってやれる方法はないでしょうか。
知的な障がいがあるために、悪質な勧誘であることがわからず高額な商品を買わされる被害にあったり、自ら店に出向いて必要以上の物を買ってしまったりすることがあります。そして、それが原因で生活費を使い果たしたり、多額の借金につながることも少なくありません。
ご長男の場合、今後も継続的に被害にあうことが予想されますので、保佐人(あるいは判断能力の程度に応じて補助人)を選任して、まずは早急に契約の取消しなど必要な対応をとることができる環境を作ることが大切です。保佐人等の選任を待っている間に被害にあう危険があれば、審判前の保全処分を利用しましょう(審判前の保全処分については「Q後見人が選ばれるまで待てないときは」を参照してください)。
また、ご長男がすでに多額の債務を抱えているのであれば、その債務を整理することも必要になります。
私(78歳)の夫(82歳)は、認知症で施設に入所しています。私は自宅で生活していますが、身体が不自由(要介護1)で介護サービスを利用しています。
私たち夫婦にはそれぞれわずかな預金がありますが、定期的な収入は、夫の厚生年金と私の国民年金だけです。この度、住まいのほかに持っている夫名義の不動産が市の収用にかかり、成年後見人の選任手続きをすることになりました。私は身体が弱いので、どなたかにお願いするつもりですが、その時、夫の財産は後見人が別に管理すると聞きました。そうなると、私は国民年金だけではとても生活できません・・・。
夫婦はお互いに協力して生活することが求められていますから(扶養義務といいます。)、今まで通り、日常生活に必要なものは、おふたりの年金から支払ってかまいません。例えば、あなたの国民年金は預金に回し、一方、あなたの生活のために、ご主人の厚生年金や預金だけを使うというのは問題がありますが、成年後見制度を利用したからといって、基本的にはこれまでの生活を大きく変える必要はありません。
80歳になる母が遠くで独りで暮らしています。近所の人の話では少し認知症が出てきているようなので、私の近くに呼び寄せるか、地元の老人ホームにでも入って生活してもらうのがよいと思うのですが、母は足腰が動くうちは自分の家で暮らしたいと言っています。最近母が訪問販売で高額のふとんを買ってしまったということがありました。そのときは近所の人の協力でクーリングオフができたのですが、今後また同じようなことが起こるのではないかと心配です。遠くにいる家族でも母を守ってあげられる方法はあるのですか。
不必要なリフォーム工事を契約させ多額の代金をだまし取るリフォーム詐欺や、一度契約した人にいくつもの業者が高額な商品を売りつける次々販売など、高齢者を狙った悪質商法が横行しています。今回はクーリングオフで事なきを得たようですが、やはりお母様はひとり暮らしですので、消費者被害にあっても周囲が気づかずに、いつのまにか取り返しのつかないところまで被害が拡大してしまうおそれがあります。
消費者被害を防ぎ、あるいは被害を最小限にくいとめるには、成年後見制度を利用して、不必要な契約は取り消すことができる環境にしておくことが必要です。後見人等になる人は遠くにいる家族でも構いませんが、単に後見人等を選任するだけでは問題の解決にはならないでしょう。同居の親族等本人の状況を身近に見守る人がいない場合、地域包括支援センターや日常生活支援事業といった支援事業がありますので、これを利用して、本人の状況の把握に努めることが必要です。
私(76歳)は、有料老人ホームで元気にひとり暮らしをしています。夫には先立たれ、子どもはいません。甥や姪などの親族は遠くにいて今までほとんど付き合いのない状態で、身寄りがないのとほぼ同じです。
先日、私は急に倒れて一時入院をしましたが、原因がはっきりしませんでした。これから先、年をとって次第に判断能力が衰えたときのことや、身体が不自由になったときのことがやはり心配です。
それから、自分が死んだときの葬儀や納骨のことも気になります。将来安心して生活できるよう何かいい方法はありませんか。
将来、判断能力が十分でなくなったときの生活や財産管理を法的に支援する人を、元気なときにあらかじめ決めておくのが良いでしょう。そのためには、あなたの判断能力がしっかりしているうちに、信頼できる人との間で任意後見契約を結ぶことで解決できるでしょう。
任意後見制度について詳しくはこちらをご覧ください。
私(78歳)は胃がんと診断されており、次に入院したときには、もう家に戻って来ることはできないだろうと思います。私は、認知症の妻(82歳)と一緒に暮らしていますが、彼女は、身体は元気で人の好き嫌いがはっきりしています。これまで、妻は介護サービスを受けながら、私が妻の財産の管理一切をしてきましたが、私が通帳の管理もできなくなると、私たち夫婦の生活はなりたちません。残る妻のためにできるだけのことをしておきたいのですが、どうすればいいのでしょうか。私たち夫婦には子どもがいません。それぞれの兄弟姉妹は亡くなり、その子どもたちとは、ほとんど交流がありません。私が亡くなった後、妻の財産が、甥や姪たちに勝手にされてしまうのではないかと心配です。
あなたが入院したり、意識がなくなったりして、おふたりのお金の管理や契約等ができなくなったときのために、あなた自身は、あなたの信頼できる人と移行型の任意後見契約を結びます。また、あなたにもしものことがあったときに備えて、遺言書を作成します。そして、奥様がおひとりになられた後のために、今から後見人等の選任手続きをしておくといいでしょう。任意後見制度と法定後見制度と遺言を組み合わせて、おふたりの生活と財産を守ることができます。
知的障がいの娘(45歳)がいます。夫は亡くなり、私(70歳)と娘の二人の生活です。私に万が一のことがあれば、他に娘の面倒を看てくれる親族はいません。
娘の安全で安心な生活を維持できるのか、蓄えた預金が娘のために、ちゃんと使われるのかどうか、とても心配です。準備するとしたら、どんなことがあるでしょうか。
娘さんのために、法定後見制度を利用するといいでしょう。これと併せて、あなたは、任意後見制度を利用することにより、不安解消の一助となることに間違いありません。親が、先に亡くなる場合や認知症になった場合に、残された子の生活や財産管理などの問題が生じてきます。このことを、「親なき後の問題」と言っています。
病院のソーシャルワーカーです。うちの病院に救急搬送されてきたAさん(82歳)は重度の認知症です。入院してきたときは、脱水症状で、ひどく衰弱していました。娘さん(52歳)とのふたり暮らしですが、食事も十分に与えられていなかったようなのです。これまで何度も入院しているのですが、そのたび娘さんが病院に押しかけて大声で怒鳴ったりして、無理やり退院させてしまいます。娘さんは精神病院の入退院を繰り返し、Aさんの年金で生活しているようです。Aさんの治療は終わったのですが、Aさんの身体に不審なあざもあり、このまま退院させてしまっていいのかとても心配です。
これまで何度も同じようなことがおきているようですから、同居の娘さんによる介護・世話の放棄という状態が続いているのだと思われます。また、身体的虐待も疑われますので、すぐに、Aさんが住んでいる地域を担当する「地域包括支援センター」に相談してください。行政担当者を含めた関係者や専門家によるケア会議が開かれます。その中で、Aさんだけではなく、同居の娘さんにもどのような支援が必要なのかを検討して、方針を決めることになります。