4月22日(水) 晴後曇り後小雨
深い山間の村にも徐々に陽が降りてきた。朝から集まったポーター達は少しでも軽い荷物を選ぼうとし、指図するシェルパのパサンは一つでも多く担がせようとして賑わいを見せている。ヤンプーはこの村にはあまり良いポーターがいないと言っていたが、必要な人数8人が集まったようだ。
シャブルベンシの村は中共軍のチベット進入により避難してきたチベット人達の住む村と聞いていたが集まったポーター達の顔付きを見るとこの地方に古くから住むタマン族のようでもある。ここから国境までは徒歩で1日行程しかなく、カトマンズへ行くよりもチベットとの交易が多いそうである。
シャブルベンシのポーター |
シャブルベンシの村 |
ボーテ・コシに掛かった吊橋を渡り、石畳が敷かれたシャブルベンシの古い村を抜けて、ランタン・コーラ(川)を渡るといよいよ山道である。この川沿いの道は2年ほど前に整備された新しい道で、緩やかなランタンコーラの流れを左に見ながら林の中の道を進む。あまり上り下りのない散策路と言った感じの良い登山路で、白樺のようにすらりと伸びた大きなタンツカという木の新芽が萌え出でて山の斜面一面に秋の紅葉のような色合いを見せて深い森を彩っていた。
シャブルベンシから3時間半でバンブーロッジに着く。2年前にバルクから歩いた行程より半日早い。私たちよりも先に出発したと思っていたポーター達が着いていない。 昼食にゆっくり時間を掛けてポーター達を待ったが中々上がってこない。気になったが空模様が怪しくなったので、シェルパのプルパが残り他は出発した。
吊橋を渡り、ランタンコーラの急流を右に見ながらジグザグの坂道を1時間半も登るとランブチュにつく。狭い谷間が開け、晴れていればガネッシュ・ヒマールの山並みが見えそうな高台になっている。そこから真紅のシャクナゲが咲く森の中を1時間も歩くと、今日の宿泊地ラマロッジ(2435m)に着いた。私たちは予定通りに目的地に着いたが、ポーターがまだ上がってこない。テントも食料も個人の荷物までまだポーターの背にある。大汗を掻いてすっかり濡れた衣服を着替えることもできない。約1時間後彼らはポツリポツリと姿を現わした。
ポーター達の行動に一体性がなく、このままでは明日からの行動に差し支えるので、遅い夕食を摂りながら、彼らが遅れた理由をヤンプーに聞くと、急遽雇われた彼らは自分達の3日分の食料の調達に駆け回り、シャブルベンシの村を出たのは10時過ぎであったそうだ。明日からは予定通りに行きますと返事が返ってきた。
ポーターを指図するシェルパのパサンは、前歴は警察官で今の仕事に興味を持ち現在勉強中であるが目に見えないところで良く働き、ヤンプーの信頼は非常に厚いようである。