貸金業法等の改悪に反対する会長声明 | ||
福岡県司法書士会 会 長 細川 眞二 |
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趣旨 現在、貸金業法、利息制限法及び出資法に関して、複数の政党において「総量規制の緩和」「上限金利の引き上げ」を内容とした再改正の議論がなされている。しかし、これらは多重債務問題の本質を見誤った法制度の改悪であるため、断固反対することをここに表明する。 理由 平成22年6月18日に完全施行された貸金業法の改正は、高金利、過剰融資、過酷な取り立てなどにより極めて深刻な多重債務被害が急増し社会問題化したことから、これらを防止するために実施されたものである。重要な改正点として、年収の3分の1を超える新たな借入れを規制したいわゆる「総量規制」が導入され、それと並行して行政処分の対象となる出資法の上限金利が29.2%から20%に引き下げられた。これらの改正や司法書士、弁護士の多重債務者への支援等により、多重債務者(貸金業者5件以上から借入れがある債務者)の数は、平成19年3月末の約171万人から平成24年3月末には約44万人まで減少している。当会でも、自治体等との連携をはかりながら多重債務者の生活再建に重点を置いた支援を行い、当会の相談センターでの初回相談料を無料化する等、多重債務問題の解決に向けた取り組みを続けてきた。 ところが、今般、自民党「小口金融に関する小委員会」による「利息制限法及び出資法の上限金利の緩和」、「総量規制の撤廃」を骨子とする改正案とりまとめや、民主党「財務金融部門改正貸金業法検討ワーキングチーム」による「中小・零細事業者向けの短期貸付けの上限金利の引き上げ」、「総量規制の撤廃」を内容とする制度見直し等、一部政治家の不見識から、これまでの官民挙げての多重債務被害撲滅の取り組みを無にしかねないような動きがある。 その主たる主張は、多重債務者のヤミ金融による被害が増加しているというものであるが、これは貸金業法改正による効果の検証もないまま、根拠のない憶測に基づき、議論が先行しているものにすぎない。そもそも法外な利息を請求するヤミ金融の行為は、取締り強化や多重債務者への啓発により防止されるべきであり、それとは反対に返済できる見込みのない借入れを助長するなど本末転倒である。また、中小・零細事業者向けの短期融資の必要性などを根拠とするものもあるが、個人事業主に対する借入れについては既に総量規制の例外とされており、これ以上の規制緩和は必要ない。 このように今般の貸金業法、利息制限法及び出資法の再改正の動きは、平成22年6月の貸金業法改正等による多重債務問題対策の実情を直視せず、その成果を反故にし、多重債務問題の解決に逆行するものであり、決して許されるものではない。 したがって、当会は、貸金業法の改悪に断固反対するものである。 |
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