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- [2006.09.14]
「貸金業制度等の改正に関する会長声明」
「貸金業制度等の改正に関する会長声明」
平成18年9月14日
福岡県司法書士会 会長 三河尻 和夫
私たち福岡県司法書士会は、多重債務被害救済に取り組む現場の法律実務家として、福岡県議会及び県内各地の地方議会での高金利引下げ意見書採択状況(全市町村69議会中、54議会)を鑑み、以下のとおり要請する。
声 明 の 趣 旨
1.出資法と貸金業規制法の上限利率の検討にあたっては、短期・小口・事業者用融資等、いかなる例外規定も一切認めない。
2.法改正後の利率適用にあたっては、数年間での段階的な引下げ等、法の抜け道となるような特例を設けない。
3.利息制限法の制限金利区分を変更しない。
との法改正を求める。
声 明 の 理 由
1. 貸金業制度等の改革の議論の現状
これまで金融庁は多重債務問題解決のため、グレーゾーン廃止、出資法の上限金利を利息制限法まで引き下げることを前提として検討してきたはずであるが、9月11日付で開催された「金融調査会、財務金融部会、法務部会、金融調査会、貸金業制度に関する小委員会」合同部会に資料提出された「貸金業制度等の改革の骨子(案)」によると(1)10万円~50万円で半年~1年での少額短期特例、数百万円、数ヶ月の事業者特例を認める少額・短期・事業者用融資の特例を認める案、(2)法律改正後から施行日1年、経過措置3年、特例措置3~5年とされ、金利が全て一本化するのに7~9年程度を要という出資法の上限金利を数年で段階的に下げる案などの特例措置を設けると共に利息制限法の制限金利の金利区分を引き上げるとする案が提出されている。
2. 特例措置について
記特例措置等が浮上してきたのは、金利が下がると借りられなくなる市民が生じてしまうこと(いわゆる貸し渋り)を回避するために必要だとの業者寄りの主張によるものである。しかし、現在の市場金利を考えれば、現行の利息制限法の制限金利(年15~20%)でさえも充分な高利であり、およそ貸し渋りがおこるとは考えられない。たとえ、貸し渋りにより借りられない市民が生じたとしても、それらの市民は高利による借入で破綻を先延ばしにするのではなく、経済的生活再建のために法的債務整理により解決すべきであり、高利によって解決する金利の問題ではない。これら借りることのできない市民については、専門家・行政等による相談体制及び生活再建のための低所得者向けの貸付制度・セーフティネット等の構築・拡充により解決すべきである。
3. 利息制限法の金利区分の変更について
現行利息制限法の金利区分について「10万円」を「50万円」に、「100万円」を「500万円」に引き上げるとすれば、消費者金融の貸付の大半を占める50万円未満の貸付については金利引き上げとなる。この金利区分変更については、利息制限法制定当事(昭和29年)以来見直しがなされていないこと、当時と現在の物価の上昇などを理由としているが、一番大事な現在の市中金利と利息制限法の金利水準乖離について全く考慮されていない。利息制限法については、一般市民の生活を破壊しない金利水準について充分検討したうえでの区分変更をするべきであり、本来であれば引き下げる必要性すらある。
4. 金利に対する県民の願い
これまで当会は、出資法の上限金利引き下げに関し、多重債務者被害救済に取り組む立場から、福岡県民の声を法改正に反映させるべく、県内各地方議会に「高金利引下げを求める意見書」採択の請願活動を実施してきた。その結果、「出資法の上限金利を利息制限法まで引下げるべき」との意見書が福岡県議会及び54の市町村議会において採択され、国会及び関係行政庁へ送付されている。
記のような特例措置等が認められる改正がなされることは、特例等一切認めることなく一律に速やかに金利の引き下げを望んでいる多勢の福岡県民の総意に反することである。
また、同様の意見書は、全国の39の都道府県及び885の市町村議会でも採択されており、同様の署名数は全国で300万人を超えていることから、こうした多くの市民の声に反する法改正など許されるものではない。
よって当会としては、各議員の先生におかれましては、市民の声に耳を傾けていただき、一切の特例措置を認めないこと、すみやかに出資法の上限金利を利息制限法に一致させること、グレーゾーン金利・みなし弁済規定を撤廃すること、利息制限法の制限金利区分を変更して金利引き上げを行なわないことを柱とする改正をしていただくよう強く求める
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