[2023/05/10]
【リーガルサポート主催】令和4年度権利擁護シンポジウムレポート①
基調講演「中核機関における権利擁護支援チームの形成支援の取組」
令和5年3月3日(金)、(公社)成年後見センター・リーガルサポート主催の令和4年度権利擁護シンポジウム「いま、成年後見人について考える~適切な後見人等の選任・交代と担い手の確保・育成の推進~」が開催され、同時にWEB配信もされました。プログラムは、3つの基調講演とパネルディスカッションという構成でした。そのうち基調講演3について簡単に紹介します。
基調講演3では、「中核機関における権利擁護支援チームの形成支援の取組」と題し、豊田市福祉総合相談課主任主査の安藤亨氏と豊田市成年後見支援センター主査の今井末果氏のお二人が豊田市の取り組みについて講演されました。
◆豊田市における中核機関等の体制整備の状況について
豊田市において、行政の体制としては、高齢・障がい、生活困窮とそれまでセクションが別々だった困りごとの相談窓口を一本化し、併せて権利擁護の課題にも取り組むべく「福祉総合相談課」を平成29年度に立ち上げ、権利擁護支援+地域づくりを実践しており、福祉の体制としては、豊田市の委託で社会福祉協議会が「豊田市成年後見支援センター」(以下、「センター」)を運営しています。
その体制下、豊田市は、地域共生社会という目指す地域づくりの実現のために「包括的な相談支援体制の充実と暮らしを支える環境整備が図られること」を目標に掲げ、その環境整備の一環として、政策的な判断・対応を行う「豊田市役所」と支援の実践・連携を担う「センター」が共働して運営する形での「中核機関」を平成29年に設置したとのことです。豊田市役所の関係各課には、「相談支援包括化推進員」を配置し、多機関間で権利擁護支援の連携・調整をスムーズに実践できる体制整備も図られているとのことです。
今後の市内の成年後見制度利用の要請への対応数とニーズと担い手を調査・分析する中で、担い手たる専門職の受任可能件数が圧倒的に少ないことが明らかになったとのことです。一方で事案を個別に検討すると、専門職でなければ難しい事案だけでなく、親族後見人が相応しい事案や市民後見人だからこそうまく寄り添える事案もあるということの整理もできたといいます。市としては、成年後見制度利用において多様な主体による複数受任や柔軟なリレーも含めた「ベストミックス(複数の手法を組み合わせて最も効率的な解決策を得ること)」を目指して、次のような取り組みをしておられるとのことです。
①親族後見人等が安心して活動できる支援体制づくり…「親族後見人の相談窓口」を設け、事務処理上のアドバイスの他、資産売却など難しい問題を専門職に相談(1時間)できるような体制作り。
②市民後見人の育成と共働による支援…「市民後見人養成講座」の実施。実務講座修了後の市民後見人バンク登録(「とよた市民後見人」)。市民後見人の後見事件受任調整及び支援(社協と共同受任。1年間社協が伴走し後方支援)
③法人後見の充実
④専門職後見人が活動しやすい環境整備
◆権利擁護支援チームの形成支援等の仕組みについて
豊田市では、課題のスケールやレベルに応じて様々な会議体を設け、さらにそれらを緊密に連関させることで個別事案の対応のみならず地域づくりにつなげる仕組み作りに取り組んでおられるとのことで、各会議体の特色について紹介されました。
❶豊田市成年後見・法福連携推進協議会(年3回程度)
福祉総合相談課主催。弁護士・司法書士・社会福祉士・医師・基幹包括支援センター所長他が参加し、センターの運営状況の評価、成年後見制度の利用促進策の検討、司法と福祉の連携により解消すべき課題の検討など、全体的な地域づくりのための仕組み作り、協力・連携体制、運営方法等を協議。
❷センターカンファレンス(毎朝)
センター職員全体で、相談・申立支援を行っている案件や法人後見の案件についての進捗状況や課題について情報共有。担当職員だけで負担や悩みを抱えることなくセンターで対応できるような仕組みにしている。
❸市・センター水曜ミーティング(毎週水曜日)
市福祉総合相談課及びセンター職員で会議し、複合的な課題についてお互いの動きを確認。特にセンターだけでは解決が難しく、行政の介入が必要な虐待案件や生活保護受給対応など頻回に協議して支援の足並みを揃えている。
❹定例会(月1回程度)
❸+アドバイザー(センター提携の弁護士・社会福祉士・司法書士)による会議。「相談案件」あるいは「後見人支援」の進捗状況や方向性の確認、情報交換、専門職・市民後見・法人後見の候補者調整(受任調整会議)を実施。アドバイザーには、定例会の場だけでなく必要に応じて随時連絡して相談しており、定例会は随時相談の確認の場でもある。
❺リーガル勉強会(月1回)
❸+LS会員による勉強会。受任調整会議で司法書士が適任となった案件について支援方針の説明や後見人支援の内容の共有をして候補者調整に役立ててもらったり、LS会員間で困っている事案の検討を行ったりしている。
❻チーム会議(適宜)
センターが受任調整会議で関わった全事案につき実施。スタートの段階で、本人、親族、後見人等、支援関係者ら全体で「本人支援」のための情報共有、具体的方針の検討、役割分担の確認を行う。
最後に、本シンポジウムのテーマに沿ったものとして、専門職(司法書士)保佐人から「とよた市民後見人」へのリレーの事案について一つ紹介されました。
成年後見人等の「ベストミックス」という概念を見据えた本人支援に向けて、「後見人の専門職」として、あるいは専門職団体の一員としての後見人等の在り方を考える上でも非常に示唆に富む講演でした。
以上
令和5年3月3日(金)、(公社)成年後見センター・リーガルサポート主催の令和4年度権利擁護シンポジウム「いま、成年後見人について考える~適切な後見人等の選任・交代と担い手の確保・育成の推進~」が開催され、同時にWEB配信もされました。プログラムは、3つの基調講演とパネルディスカッションという構成でした。そのうち基調講演3について簡単に紹介します。
基調講演3では、「中核機関における権利擁護支援チームの形成支援の取組」と題し、豊田市福祉総合相談課主任主査の安藤亨氏と豊田市成年後見支援センター主査の今井末果氏のお二人が豊田市の取り組みについて講演されました。
◆豊田市における中核機関等の体制整備の状況について
豊田市において、行政の体制としては、高齢・障がい、生活困窮とそれまでセクションが別々だった困りごとの相談窓口を一本化し、併せて権利擁護の課題にも取り組むべく「福祉総合相談課」を平成29年度に立ち上げ、権利擁護支援+地域づくりを実践しており、福祉の体制としては、豊田市の委託で社会福祉協議会が「豊田市成年後見支援センター」(以下、「センター」)を運営しています。
その体制下、豊田市は、地域共生社会という目指す地域づくりの実現のために「包括的な相談支援体制の充実と暮らしを支える環境整備が図られること」を目標に掲げ、その環境整備の一環として、政策的な判断・対応を行う「豊田市役所」と支援の実践・連携を担う「センター」が共働して運営する形での「中核機関」を平成29年に設置したとのことです。豊田市役所の関係各課には、「相談支援包括化推進員」を配置し、多機関間で権利擁護支援の連携・調整をスムーズに実践できる体制整備も図られているとのことです。
今後の市内の成年後見制度利用の要請への対応数とニーズと担い手を調査・分析する中で、担い手たる専門職の受任可能件数が圧倒的に少ないことが明らかになったとのことです。一方で事案を個別に検討すると、専門職でなければ難しい事案だけでなく、親族後見人が相応しい事案や市民後見人だからこそうまく寄り添える事案もあるということの整理もできたといいます。市としては、成年後見制度利用において多様な主体による複数受任や柔軟なリレーも含めた「ベストミックス(複数の手法を組み合わせて最も効率的な解決策を得ること)」を目指して、次のような取り組みをしておられるとのことです。
①親族後見人等が安心して活動できる支援体制づくり…「親族後見人の相談窓口」を設け、事務処理上のアドバイスの他、資産売却など難しい問題を専門職に相談(1時間)できるような体制作り。
②市民後見人の育成と共働による支援…「市民後見人養成講座」の実施。実務講座修了後の市民後見人バンク登録(「とよた市民後見人」)。市民後見人の後見事件受任調整及び支援(社協と共同受任。1年間社協が伴走し後方支援)
③法人後見の充実
④専門職後見人が活動しやすい環境整備
◆権利擁護支援チームの形成支援等の仕組みについて
豊田市では、課題のスケールやレベルに応じて様々な会議体を設け、さらにそれらを緊密に連関させることで個別事案の対応のみならず地域づくりにつなげる仕組み作りに取り組んでおられるとのことで、各会議体の特色について紹介されました。
❶豊田市成年後見・法福連携推進協議会(年3回程度)
福祉総合相談課主催。弁護士・司法書士・社会福祉士・医師・基幹包括支援センター所長他が参加し、センターの運営状況の評価、成年後見制度の利用促進策の検討、司法と福祉の連携により解消すべき課題の検討など、全体的な地域づくりのための仕組み作り、協力・連携体制、運営方法等を協議。
❷センターカンファレンス(毎朝)
センター職員全体で、相談・申立支援を行っている案件や法人後見の案件についての進捗状況や課題について情報共有。担当職員だけで負担や悩みを抱えることなくセンターで対応できるような仕組みにしている。
❸市・センター水曜ミーティング(毎週水曜日)
市福祉総合相談課及びセンター職員で会議し、複合的な課題についてお互いの動きを確認。特にセンターだけでは解決が難しく、行政の介入が必要な虐待案件や生活保護受給対応など頻回に協議して支援の足並みを揃えている。
❹定例会(月1回程度)
❸+アドバイザー(センター提携の弁護士・社会福祉士・司法書士)による会議。「相談案件」あるいは「後見人支援」の進捗状況や方向性の確認、情報交換、専門職・市民後見・法人後見の候補者調整(受任調整会議)を実施。アドバイザーには、定例会の場だけでなく必要に応じて随時連絡して相談しており、定例会は随時相談の確認の場でもある。
❺リーガル勉強会(月1回)
❸+LS会員による勉強会。受任調整会議で司法書士が適任となった案件について支援方針の説明や後見人支援の内容の共有をして候補者調整に役立ててもらったり、LS会員間で困っている事案の検討を行ったりしている。
❻チーム会議(適宜)
センターが受任調整会議で関わった全事案につき実施。スタートの段階で、本人、親族、後見人等、支援関係者ら全体で「本人支援」のための情報共有、具体的方針の検討、役割分担の確認を行う。
最後に、本シンポジウムのテーマに沿ったものとして、専門職(司法書士)保佐人から「とよた市民後見人」へのリレーの事案について一つ紹介されました。
成年後見人等の「ベストミックス」という概念を見据えた本人支援に向けて、「後見人の専門職」として、あるいは専門職団体の一員としての後見人等の在り方を考える上でも非常に示唆に富む講演でした。
以上