[2023/06/02]
【リーガルサポート主催】令和4年度権利擁護シンポジウムレポート②
基調講演2「適切な後見人の選任・交代及び担い手の確保・育成の推進に関する厚生労働省の取組」
令和5年3月3日(金)に成年後見センター・リーガルサポート主催のシンポジウムが開催されました。そのなかで、基調講演2「適切な後見人の選任・交代及び担い手の確保・育成の推進に関する厚生労働省の取組」について報告します。
1、第二期成年後見制度利用促進基本計画における対応
第二期成年後見制度利用促進基本計画(以下、「第二期計画」という)では、地域共生社会実現に向けた権利擁護支援の推進が掲げられています。地域共生社会は、「制度・分野の枠や『支える側』と『支えられる側』という従来の関係を超えて、住み慣れた地域において、人と人、人と社会がつながり、全ての住民が、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう、社会全体で支え合いながら、ともに地域を創っていくこと」を目指すものです。第二期計画では、地域共生社会実現のため、本人を中心にした支援・活動における共通基盤となる考え方として「権利擁護支援」を位置付けた上で、権利擁護支援の地域連携ネットワークの一層の充実などの成年後見制度利用促進の取組をさらに進めることとされています。これまでよりさらに本人が周囲や社会とのつながりを保ちつつ、本人の意思が尊重されるような支援の在り方を考えていく必要があると感じました。
第二期計画のなかで、担い手の確保・育成などの推進は、優先して取り組む事項とされており、具体的には以下のように検討されています。
(1)適切な後見人等が選任・交代できるようにするためには、各地域に多様な主体が後見業務等の担い手として存在し ている必要がある。
(2)市民後見人等の育成・活躍支援は、地域共生社会の実現のための人材育成や参加支援、地域づくりという観点も重視して推進する。国は、意思決定支援や身上保護等の内容を含めるなど、より充実した養成研修カリキュラムの見直しの検討等を進める。
(3)都道府県には、圏域毎に市民後見人の育成方針を策定した上で、市町村と連携して市民後見人養成研修を実施することが期待される。また、市町村には、市民後見人の活動の支援や市民後見人の役割の周知などを行うことが期待されるほか、研修受講者の募集を主体的に進めることや、必要に応じて、都道府県と連携して養成研修の内容を充実することが期待される。
(4)法人後見の実施団体としては、社会福祉協議会による後見活動の更なる推進が期待される一方、都道府県及び市町村等が連携して、社会福祉協議会以外の法人後見の担い手の育成をする必要もある。
(5)国は、法人後見研修カリキュラムと、最高裁判所の集約・整理した法人が後見人等に選任される際の考慮要素等を併せて周知する。
(6)都道府県には、圏域毎に法人後見の担い手の育成方針を策定した上で、法人後見実施のための研修を実施することが期待される。
(7)専門職団体による専門職後見人の確保・育成、市町村・中核機関による必要に応じた親族後見人の支援も行う。
「市民後見人」とは、「判断能力が不十分な本人のその人らしい暮らしを支えるなどの社会貢献のため、地方公共団体等が行う市民後見人養成研修などにより一定の知識や技術・態度を身に着けた地域住民(専門職や親族ではない)であって、家庭裁判所によって後見人等として選任されている人」を指すとされています。厚生労働省は、これらの取組に対し、必要な予算を配分し、それらが有効に機能するようにする予定です。
以上のように多様な手段が検討されていることからも、今後ますます増加するであろう支援を必要とする人を支えるための担い手の確保・育成等の推進が重要視されているかがわかります。
2、多様な主体の参画と専門職の関わり
第二期計画では、市町村や都道府県に協議会が設けられることとなっています。協議会とは、各地域において、専門職団体や当事者団体等を含む関係機関・団体が連携体制を強化し、これらの機関・団体による自発的な協力を進める仕組みのことです。成年後見制度を利用する事案に限定することなく、権利擁護支援チームに対し、法律・福祉の専門職や関係機関が必要な支援を行うことができるよう、協議の場を設けることとされています。都道府県による全体協議会で取り組む内容として、以下の内容が想定されています。
(1)担い手を確保・育成するための方針策定
(2)管内市町村の体制整備の取組を進めるための具体的支援策の検討
(3)市町村、中核機関や法人後見実施団体等、交流の機会
3、担い手の確保・育成等の推進
中核機関等の整備による権利擁護支援のニーズの顕在化や認知症高齢者の急速な増加が見込まれる中、全国どの地域においても専門職後見人のみならず、市民後見人や法人後見による支援が受けられるよう、以下の取組により担い手の確保・育成等の推進を図ることとされています。
(1)市民後見人の育成
令和4年度老人保健健康増進等事業において、①平成23年度に策定した「市民後見人 養成研修カリキュラム」の見直しを行い、意思決定支援や身上保護の内容を含めるなどその内容を充実させることを検討するとともに②地域において広く権利擁護の支援を行っている市民後見人養成研修修了者の活動の状況等について調査を行い、活用の推進方策を検討することが予定されています。
(2)専門職後見人の確保・育成
専門職後見人の確保・育成については、財産管理及び身上保護における意思決定支援の重視を基本とした上で、それぞれの専門性に応じた受任を想定し、各専門職団体で対応することが基本となります。併せて、専門職団体間で、専門職後見人の質の向上等の取組に関する情報交換を行うなどの連携の強化を通じて、効果的な支援方策の検討につなげることが期待されます。また研修等の取組を行う際には、後見人等は財産管理及び身上保護の両方を担うものであることと、いずれの事務も本人の意思決定支援の観点から行う必要があることを踏まえる必要があります。
4、まとめ
第二期計画では、第一期計画の課題に対して新たな仕組みや方法を用いて対応することとされています。その中には成年後見制度全体の見直しを含む大きなものも含まれています。その中で、優先して取り組むべきとされている、担い手の確保・育成の推進に関しては、都道府県や市町村による取り組み以外にも家庭裁判所や専門職団体等がそれぞれ協力して対応していくことが明記されています。権利擁護支援を必要とする人のために、市民後見人、法人後見人の役割はさらに増していくこととされており、専門職後見人及び専門職団体は各々の専門性を活かしてそれらの方々と連携し協力しあうことが必要になってくると感じました。
以上
令和5年3月3日(金)に成年後見センター・リーガルサポート主催のシンポジウムが開催されました。そのなかで、基調講演2「適切な後見人の選任・交代及び担い手の確保・育成の推進に関する厚生労働省の取組」について報告します。
1、第二期成年後見制度利用促進基本計画における対応
第二期成年後見制度利用促進基本計画(以下、「第二期計画」という)では、地域共生社会実現に向けた権利擁護支援の推進が掲げられています。地域共生社会は、「制度・分野の枠や『支える側』と『支えられる側』という従来の関係を超えて、住み慣れた地域において、人と人、人と社会がつながり、全ての住民が、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう、社会全体で支え合いながら、ともに地域を創っていくこと」を目指すものです。第二期計画では、地域共生社会実現のため、本人を中心にした支援・活動における共通基盤となる考え方として「権利擁護支援」を位置付けた上で、権利擁護支援の地域連携ネットワークの一層の充実などの成年後見制度利用促進の取組をさらに進めることとされています。これまでよりさらに本人が周囲や社会とのつながりを保ちつつ、本人の意思が尊重されるような支援の在り方を考えていく必要があると感じました。
第二期計画のなかで、担い手の確保・育成などの推進は、優先して取り組む事項とされており、具体的には以下のように検討されています。
(1)適切な後見人等が選任・交代できるようにするためには、各地域に多様な主体が後見業務等の担い手として存在し ている必要がある。
(2)市民後見人等の育成・活躍支援は、地域共生社会の実現のための人材育成や参加支援、地域づくりという観点も重視して推進する。国は、意思決定支援や身上保護等の内容を含めるなど、より充実した養成研修カリキュラムの見直しの検討等を進める。
(3)都道府県には、圏域毎に市民後見人の育成方針を策定した上で、市町村と連携して市民後見人養成研修を実施することが期待される。また、市町村には、市民後見人の活動の支援や市民後見人の役割の周知などを行うことが期待されるほか、研修受講者の募集を主体的に進めることや、必要に応じて、都道府県と連携して養成研修の内容を充実することが期待される。
(4)法人後見の実施団体としては、社会福祉協議会による後見活動の更なる推進が期待される一方、都道府県及び市町村等が連携して、社会福祉協議会以外の法人後見の担い手の育成をする必要もある。
(5)国は、法人後見研修カリキュラムと、最高裁判所の集約・整理した法人が後見人等に選任される際の考慮要素等を併せて周知する。
(6)都道府県には、圏域毎に法人後見の担い手の育成方針を策定した上で、法人後見実施のための研修を実施することが期待される。
(7)専門職団体による専門職後見人の確保・育成、市町村・中核機関による必要に応じた親族後見人の支援も行う。
「市民後見人」とは、「判断能力が不十分な本人のその人らしい暮らしを支えるなどの社会貢献のため、地方公共団体等が行う市民後見人養成研修などにより一定の知識や技術・態度を身に着けた地域住民(専門職や親族ではない)であって、家庭裁判所によって後見人等として選任されている人」を指すとされています。厚生労働省は、これらの取組に対し、必要な予算を配分し、それらが有効に機能するようにする予定です。
以上のように多様な手段が検討されていることからも、今後ますます増加するであろう支援を必要とする人を支えるための担い手の確保・育成等の推進が重要視されているかがわかります。
2、多様な主体の参画と専門職の関わり
第二期計画では、市町村や都道府県に協議会が設けられることとなっています。協議会とは、各地域において、専門職団体や当事者団体等を含む関係機関・団体が連携体制を強化し、これらの機関・団体による自発的な協力を進める仕組みのことです。成年後見制度を利用する事案に限定することなく、権利擁護支援チームに対し、法律・福祉の専門職や関係機関が必要な支援を行うことができるよう、協議の場を設けることとされています。都道府県による全体協議会で取り組む内容として、以下の内容が想定されています。
(1)担い手を確保・育成するための方針策定
(2)管内市町村の体制整備の取組を進めるための具体的支援策の検討
(3)市町村、中核機関や法人後見実施団体等、交流の機会
3、担い手の確保・育成等の推進
中核機関等の整備による権利擁護支援のニーズの顕在化や認知症高齢者の急速な増加が見込まれる中、全国どの地域においても専門職後見人のみならず、市民後見人や法人後見による支援が受けられるよう、以下の取組により担い手の確保・育成等の推進を図ることとされています。
(1)市民後見人の育成
令和4年度老人保健健康増進等事業において、①平成23年度に策定した「市民後見人 養成研修カリキュラム」の見直しを行い、意思決定支援や身上保護の内容を含めるなどその内容を充実させることを検討するとともに②地域において広く権利擁護の支援を行っている市民後見人養成研修修了者の活動の状況等について調査を行い、活用の推進方策を検討することが予定されています。
(2)専門職後見人の確保・育成
専門職後見人の確保・育成については、財産管理及び身上保護における意思決定支援の重視を基本とした上で、それぞれの専門性に応じた受任を想定し、各専門職団体で対応することが基本となります。併せて、専門職団体間で、専門職後見人の質の向上等の取組に関する情報交換を行うなどの連携の強化を通じて、効果的な支援方策の検討につなげることが期待されます。また研修等の取組を行う際には、後見人等は財産管理及び身上保護の両方を担うものであることと、いずれの事務も本人の意思決定支援の観点から行う必要があることを踏まえる必要があります。
4、まとめ
第二期計画では、第一期計画の課題に対して新たな仕組みや方法を用いて対応することとされています。その中には成年後見制度全体の見直しを含む大きなものも含まれています。その中で、優先して取り組むべきとされている、担い手の確保・育成の推進に関しては、都道府県や市町村による取り組み以外にも家庭裁判所や専門職団体等がそれぞれ協力して対応していくことが明記されています。権利擁護支援を必要とする人のために、市民後見人、法人後見人の役割はさらに増していくこととされており、専門職後見人及び専門職団体は各々の専門性を活かしてそれらの方々と連携し協力しあうことが必要になってくると感じました。
以上