りーがるーブログ

[2023/06/06] 報告

LSふくおか 総会前研修レポート1

 令和5年5月20日(土)、リーガルサポート福岡支部主催による倫理研修が開催されました。
 今回は筑後エリアの竹本安伸会員を講師にお招きし、『後見の専門職としての職業倫理と執務姿勢』という題目でご講演いただきました。

1.会員の動向
 リーガルサポート福岡支部は2000年1月に設立されました。当時は成年後見制度に対する理解が少なく、その後に制定された市民後見人制度も周知が十分ではない状況でした。しかし、近年では大牟田市で開催している市民後見フォーラムの参加者もすぐに定員に達する等、世間の関心も高まり、社会にとってなくてはならない制度となっています。
 福岡支部の会員数と名簿登録者数は平成31年から概ね横ばいとなっており、また、法定後見関連就任状況における監督業務数も横ばいで推移していますが、後見業務数は年々増加しています。
 一方、裁判所の統計によると、専門職以外を含めた後見人等による不正事例は、毎年減少傾向にあるとはいえ発生しています。専門職による不正事例の場合、その刑事的、民事的、社会的制裁はより強く、そのため、特に司法書士には、高い倫理観が求められているといえます。これに対し福岡支部においては、不祥事再発防止策の実施や、被後見人等の通帳の原本確認といった独自の取り組みにより、不正の防止に努めています。

2.不正防止の取組と執務支援
 司法書士による不正は、個人の不正にとどまらず司法書士ひいては士業全体の信用失墜につながります。そのため、リーガルサポートでは定款の第3条に、『この法人は、高齢者、障害者等が自らの意思に基づき安心して日常生活を送ることができるよう支援し、もって高齢者、障害者等の権利の擁護及び福祉の増進に寄与することを目的とする。』と定めています。また、『専門職後見人養成事業』と『専門職後見人指導監督事業』を事業の2本柱とし、養成事業としては後見人等候補者名簿の作成と研修制度の運営を実施しています。
 研修では法律、福祉、医療、人権、倫理といった後見事務の質の確保において必要な分野についてテーマごとに実施していますが、2018年以降には、その時期に特に必要であると定めたテーマを『指定研修』として必須研修として、本年7月1日からは、新規名簿登載の要件である研修単位の取得数を25時間以上に増やし、名簿登載者の質の向上に努めております。
 指導監督事業では、業務報告の精査と執務管理支援を行っています。散見される事例としては後見業務終了時の引継ぎ場面でのトラブルが挙げられ、そのための対策として、現在の業務報告の精査(執行管理支援)は財産管理に関する事項が中心となっていますが、今後は身上保護に関する業務の報告や、指導監督、支援の充実が課題となっています。
このような指導監督事業を通した、後見事務の質の担保、不正行為の防止に関する取り組みをリーガルサポートでは担っています。
 なお、後見人等の交代理由としては、苦情等を契機とするものも少なくありませんが、これは特に本人を含む関係者とのコミュニケーション(説明)不足が原因となっている事例が多く認められます。司法書士となかなか連絡が取れない、後見人がこちらの意図をくんでくれない、といったことで交代を要求されるケースもありますが、後見人等のスムーズな交代のためにも、業務報告が重要となります。

3.研修の意義と重要性
 研修の大きな目的は、個人の成長を促し、組織の成長につなげていくことです。研修を行うことで、実務では経験できないような学びや気付きが得られ、非日常の場から日常を振り返り、参加者間で学びを共創し、気付きや発見を共有・最大化していくことができます。現在では後見業務における専門職への期待が高まっていることから、『後見の専門職』としての個を高め、不正防止につなげることが研修の大きな意義となっています。
 研修を通して判断に迷うような事例や、経験したことがない事例を学ぶことで、専門的な知識や技術を習得し、後見の専門職にふさわしい人材を育成することを目的としています。

4.職業倫理とは・・・・・
 倫理とは善の心と正しい行いを実践することです。守るべき倫理の基本は社会人として模範的な行動を行うことであり、具体的には、①様々なルールを守る②社会の一員として世の中の役に立つ③責任のある行動を行う④しっかりとした人格を形成する⑤日々のコミュニケーションから報告・連絡・相談をしっかり行う、といったことが挙げられます。
 大牟田市成年後見センターでは、倫理に関する研修は市民後見人に対しても年1回実施していますが、当たり前のことであるが故に実感がわかないという意見もあります。しかし、当たり前ができていないからこそ不正が発生するのです。
 たとえ法律やルールを守らなくても、その違反行為に対するペナルティが発生しない場合は、最終的に個人の倫理観や道徳観に委ねられることになります。専門職に必要なのは法令遵守と高い職業倫理です。例えば、親しみを込めて被後見人を「~ちゃん」付けで呼ぶことはどうでしょうか。このような場合、主観や固定観念にとらわれず、後見人・被後見人・第三者のそれぞれの立場で考えることが重要です。倫理観が個人によって異なるからこそ、規則やルールがあることを忘れてはなりません。
 法律や規則を守るためには、場合によっては他の専門職に意見を聞くことも重要です。不正が生まれる背景には、知らない、黙っていればいい、他の人もしている、これくらいなら大丈夫、あとで謝ればいい、といった理由にならない弁解があります。不正を防止するためにも、倫理研修を通して、個人の倫理観や道徳観を高め維持していくことが必要となります。まさに『継続は力』なのです。

5.新しい司法書士行動規範(成年後見分野)について
 規範には、『司法書士の使命は、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することにある。その使命を自覚し、自らの行動を規律する規範を明らかにするため、司法書士行為規範を制定する。我々は、これを実践し、社会の信頼と期待に応えることをここに宣言する。』と明記されおり、司法書士としての使命が宣言されています。
 ここでは成年後見に関する分野から一部を抜粋して解説します。
・第70条 法定後見等に関する相談
 法定後見等に関する相談のうち、相談元の9割は親族や施設、病院のスタッフであり、本人自ら相談をされるケースは稀です。そのため、差し迫った課題がある本人自身が不在の中で相談を受ける場合が多くありますが、本人がよく分かっていない状態である以上、聞き取りは慎重に行う必要があります。
・第71条 後見等開始申立書類の作成
 本人の意向がよく分からない場合は、本当に本人にとって必要な申立てであるかどうかを熟考する必要があります。あくまで手続きは書類が整えば可能ではありますが、本人の権利を擁護するためにも、面談を行うことが大切です。本人の利益に反する場合には、受任を断る勇気も必要です。重要なのは、『本人が困っているのか否か。』という点です。
・第73条 支援者との連携
 司法書士が成年後見等に就任した場合には、支援者と連携を図るよう努めることが求められます。後見業務は司法書士1人では不可能です。いかに親族、福祉、医療及び地域の関係者等との連携を密にしていくかが重要であり、それが本人に対する最大限の支援につながっていくのです。

 『後見の専門職としての職業倫理と執務姿勢』の講義は、専門職である司法書士にとっては基本理念となる内容ですが、一方で個人の倫理観や道徳観に委ねられる部分も大きいため、研修等を通じてその重要性を定期的に再認識する必要性を感じた講演でした。
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