[2023/07/03]
【リーガルサポート主催】令和４年度権利擁護支援シンポジウムレポート③
基調講演１「適切な後見人等の選任・交代の推進に関する家庭裁判所の取組」
令和５年３月３日（金）１３時から、（公社）成年後見センター・リーガルサポート主催の令和４年度権利擁護シンポジウム「いま、成年後見人について考える～適切な後見人等の選任・交代と担い手の確保・育成の推進～」がAP東京八重洲にて開催されました。シンポジウムには司法書士はもちろんのこと、他士業や福祉に係る方々にも多くご参加いただき、権利擁護に対する関心の度合いの高さを感じました。
基調講演１では、最高裁判所事務総局家庭局第二課長向井宣人氏より、適切な後見人等の選任・交代の推進に関する家庭裁判所の取組みについて講演されました。
１．後見人等の選任イメージに関する検討について
家庭裁判所では、成年後見制度を利用する本人の意思決定支援・身上保護の側面を重視し、利用者がメリットを実感できる制度・運用をするために、リーガルサポートを含む専門職団体との間で、後見人等に求められる役割や、後見人等の選任の在り方等について議論を行っています。平成３１年１月、各家庭裁判所に対し、議論に関する情報を共有したとのことです。
その情報の内容は、次の４つです。１つめは、親族等の候補者がいる場合には、その候補者を選任することの適否を検討すること。２つめは、親族等を後見人等に選任する場合には中核機関等による継続的な支援の有無を検討し、支援が期待できない場合は、専門職後見監督人の選任を検討すること。３つめは、本人の課題の解決に専門的な知見を要する場合や、後見人等として事務を行う能力・適性が不足している場合には、専門職を後見人等に選任する必要があること。４つめは、本人のニーズや課題、後見人等の状況に変化が生じた場合は、変化の内容に応じて柔軟に後見人等の選任の形態を見直すこと、とのことです。
２．適切な後見人等の選任・交代に向けた地域づくりについて
家庭裁判所は、以下の３つの視点に基づいて、適切な後見人等の選任・交代に向けた地域づくりに携わっているとのことでした。
（１）担い手の確保・育成
後見業務の担い手を確保・育成するために、家庭裁判所は、市民後見人の育成の場面で自治体と連携しているとのことです。
（２）受任者調整の仕組みの準備
受任者調整とは、求められる後見活動や本人の状況に合わせて、適切な後見人候補者を検討することです。受任者調整は、後見制度の申立て前からの福祉的支援と、申立て後の司法判断をつなぐ機能を有するため、裁判所と福祉・行政との事前のイメージ共有やプロセスの相互理解が不可欠です。よって、家庭裁判所は、市民後見人を選任する際の考慮要素に関するイメージを共有し、模擬事例を用いた検討を行っているとのことです。
（３）市民後見人等へのリレーのための体制の確保
市民後見人等へのリレーとは、はじめは専門職後見人が後見業務を行い、専門職が取り組むべき問題が解決した後に、市民後見人に後見業務を引き継ぐやり方です。市民後見人等へのリレーを行うには、後見人の選任当初から将来の交代について認識を共有しておくことが重要です。そのため、家庭裁判所は、関係機関同士の情報共有の在り方や具体的事務フローについての検討を行い、どのような事案がリレーに適しているかについて認識共有を図っているとのことです。
３．さいごに
本人にとって適切な後見人等を判断することは、難しい問題です。本人の意思決定支援・身上保護を重視するのはもちろんのこと、信頼関係を築けるか、本人のニーズを十分にくみ取ることができるかも重要なことです。
後見業務に日常的に携わっていても、家庭裁判所の後見人等の選任に関する基本的な考え方や、取り組みについては、知る機会が少ない印象を持ちます。その中で、今回、最高裁判所事務総局家庭局第二課長向井宣人氏より、家庭裁判所の最新の考え方や取り組みについて伺うことができたのは、非常に貴重な機会でした。
以上
