[2023/09/18]
『安全装置を備えた任意後見・代理制度~信頼される制度に向けて~』レポート
『安全装置を備えた任意後見・代理制度~信頼される制度に向けて~』レポート
LSふくおか広報部 垣田みのり
令和5年5月20日(土)リーガルサポート福岡支部の総会前研修会が開催され、その第1講として、船木美香リーガルサポート本部常任理事を講師にお招きし、『安全装置を備えた任意後見・代理制度~信頼される制度に向けて~』とのタイトルで任意後見・任意代理の理念や不祥事防止のための取り組みについてご講演いただきました。
◆ 任意後見制度の基本理念と不正防止について
冒頭、任意後見制度に対して、玉石混淆の事業者による高額な委託金の請求や横領など、制度自体が市民の方からマイナスのイメージをもたれており、利用件数も伸び悩んでいるのが現状だと説明されました。
任意後見制度の基本理念について
「任意後見制度は、自己の判断能力が減退する前に、減退した際の支援者(任意後見人)を、あらかじめ自己決定して、自由な契約(任意後見契約)により定めるものです。
能力が減退した後には、家庭裁判所が選任する任意後見監督人による公的な保護や支援も受けられる、従来からの任意代理に監督という安全装置を付加した任意代理と法定後見を融合させたものといえます」
任意後見契約は、任意後見とほぼ同様の広範囲にわたる事務に対する代理権を付与する従来からの任意代理を併用するかたちでの活用が多く用いられてきました。
このような活用方法を移行型任意後見といいます。
令和2年の法務省の調査によれば、締結済みの任意後見契約のうち、全体の4分の3がこの移行型任意後見であることが判明しています。
しかし、移行型任意後見では、本人の判断能力が減退してもなお、家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任を請求しない事案が少なくないと考えられています。そうすると、任意後見制度による安全装置は骨抜きになってしまいます。
任意後見監督人が選任されれば、監督人と裁判所からの監督が期待できますが、一方で選任される前の任意代理の段階で、いかに安全装置を準備するかが重要です。
そのためにLSふくおかでは本研修などを通じて会員への意識づけを行うとともに、任意代理マニュアルを作成し、会員にその遵守を求めています。
令和4年度~令和8年度の第二期後見制度利用促進基本計画においては、優先して取り組む事項として、任後見制度の利用促進が掲げられています。その中では行政などの取り組みについても触れられています。
例えば川崎市では終活支援事業として、「川崎市未来あんしんサポート事業」というものが行われています。これは、支援を受けられる親族がいない市内在住の高齢の方等を対象に、生前の定期確認を含め死亡後の葬儀・埋葬や各種届出及び遺言執行等を行うものです。
死後のさまざまな手続きや事務を事前に決めておくことで、人生の終末期を安心して過ごせるよう支援するもので、このような動きが広がるといいなと思いました。
任意後見制度は、その事務内容に本人の意思が反映されるため、本人との信頼関係の構築が重要です。
また、継続的見守り契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約、遺言、民事信託等と併用することにより、さらに幅広く本人の意思の実現を図ることが可能になるすばらしい制度であるとも感じます。だからこそ、安心して利用できる制度でなければならないと改めて思いました。