りーがるーブログ

[2024/01/14] イベント報告

モデル事業重点支援自治体取組報告会(都道府県)レポート

 10月27日に、厚生労働省委託事業である「持続可能な権利擁護支援モデル事業」(以下、モデル事業という)に取り組んだ自治体による報告会が行われました。このモデル事業とは、第二期成年後見制度利用促進基本計画のうち「総合的な権利擁護支援策の充実」という項目の中で掲げられた「日常生活自立支援事業等との連携、体制強化」「新たな連携による生活支援・意思決定支援の検討」「都道府県単位での新たな取組の検討」のことを指します。厚生労働省は令和4年度より5つの自治体を重点支援自治体として支援をしており、今回は静岡県と京都府の取り組みについてレポートします。
 
 静岡県の現状として、平成28年から令和4年の間に後見等の利用者数が26.9パーセントも増加し、特に静岡家裁下田支部では220.8パーセントも増加しているとの報告がありました。
1市5町からなる賀茂地区という人口約6万人の場所でモデル事業に取り組みました。地区での調査では、「高齢化がピークを迎えており、認知力が低下する高齢者も相対的に増加している」「子ども世代が地域外に出て行ってしまうため家族相互補完機能が低下」「専門職後見人が圧倒的に足りない」などの声が社会福祉協議会から上がり、後見人の担い手不足は明確だという認識で一致しました。そこで、静岡県の対応として、地区の社会福祉法人等を新たな法人後見の担い手として育成すること、家庭裁判所及び専門職団体等も含めて受任者調整及び後見人のリレーの仕組みづくりに向けた協議を行い、後見人の担い手確保と利用促進を図ることとしました。そこで示されたリレーの内容は、専門職等が困難課題を解決し、社協等法人後見人がその他の課題を解決し、最後に市民後見人に託すというものです。実際に専門職等から社協社協等法人後見人へのリレーが行われています。
 しかし、静岡県全体で市民後見人養成講座を修了した人は6622人いますが、実際に就任したのは71件であり、賀茂地区では、78人が修了し、就任は1件のみとなっています。まだまだ数が足りていないのではないかという感想を持ちました。
 静岡県がモデル事業を実施してからの課題として挙げていたのは、法人後見の新たな担い手の確保と、法人後見のノウハウのある実務担当者の確保でした。前者は社会福祉法人に対し法人後見に取り組むメリットを打ち出していく必要があるということ、後者は市民後見人養成講座を活用して研修を実施し、法人内にノウハウのある人材がいない場合は、伴走支援する仕組みづくりが求められると総括していました。
 
 京都府は、府全体の人口の約56パーセントが京都市に集中しており、京都市以外の地域では高齢化と人口減少が著しいところも多く、専門職の不足が顕著で圏域を越えた専門職の選任が増加している状況です。そこで京都府全体で担い手を増やす仕組みが必要であり、市町村や圏域での対応が困難な事例についても、府全域を対象とした受任体制が求められるとの結論が出ました。
 京都府が取り組むモデル事業の内容として、関係機関が連携し、総合的な権利擁護支援システムが提案されました。
 具体的には、(1)成年後見(法人後見)(2)日常生活自立支援事業(3)多様な権利擁護支援メニューの3つを府・市町村が役割分担をし、三位一体となって支援するというものです。それらを活用し、シームレスな支援を通した地域包括支援体制の構築を目標にしたとのことです。その他にも、京都府社協を法人後見人とする場合の市町村との相談支援フローの確認、関係機関との権限分配・役割分担の確認がなされました。
 課題としては、市町村社協の体制の脆弱さ、財源不足、日常生活自立生活支援事業との連携が挙げられていました。効果として、組織で困難事案や長期支援が必要な事案に対し対応することができる、日常生活自立支援事業と成年後見制度の一体的取り組みの推進、過疎地域での本人を中心とした支援の体制整備ができたことが挙げられていました。
 
 2つの県の取り組みを聞いて、過疎地域での後見制度の担い手不足は共通しており、おそらく全国的に同じ傾向なのだろうと思いました。この問題に、一人の専門職や一つの団体だけで対処することは不可能であり、家庭裁判所、自治体、専門職団体そして市民が一緒になって取り組まなければこれからさらに進む少子高齢化のスピードには対応できません。逆に言えば、それぞれの団体や市民が協力することができれば、持続可能な権利擁護支援も実現できるのだろうと感じました。
 

 
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