[2024/04/29]
令和5年度権利擁護シンポジウムレポート
令和5年度権利擁護シンポジウムレポート
令和6年3月8日(金)13時から、(公社)成年後見センター・リーガルサポート主催の令和5年度権利擁護シンポジウム「地域の権利擁護を支える市民後見人~地域共生社会の実現に向けた市民後見人の育成・活躍支援~」がAP東京八重洲にて開催されました。
私は昨年の権利擁護支援シンポジウムにも現地参加をしましたが、今年も昨年同様多くのリーガルサポート会員、他士業、福祉に係る方々がシンポジウムに現地参加されていて、権利擁護に対する関心の度合いの高さを感じました。
シンポジウムは、当法人理事長高橋隆晋による挨拶に始まり、同志社大学社会学部教授 永田祐氏基調講演1、厚生労働省社会・援護局 地域福祉課 成年後見制度利用促進室長 火宮麻衣子氏による基調講演2、最高裁判所事務総局 家庭局 第二課長向井宣人氏による基調講演3、そして、パネルディスカッションが行われました。
当法人理事長高橋隆晋の挨拶では、市民後見人に対するリーガルサポートの姿勢に言及しました。リーガルサポートでは、今後、全国各地で多くの市民後見人が誕生し、活躍できるよう支援し、地域における権利保護の充実がより一層図られるよう取り組んでいくとのことです。
基調講演1では、永田祐氏が、市民後見人が活躍することは共生社会の実現に資することにも繋がると話され、大きく2つのことが取り上げられました。1つは市民後見人の活躍の重要性、もう1つは市民後見人の可能性です。
市民後見人の大きな特徴として、同じ地域に暮らす市民として本人への寄り添い型の後見活動を行うとことが挙げられます。同じ市民として付き合いながら、意思を尊重する寄り添い型の支援は、専門職ではなく市民後見人が得意とするものです。それは、専門職後見人の活動とは異なるものです。専門職後見人が不足しているから市民後見人を必要とするのではなく、市民後見人に適切な事案があり、市民後見人の力が必要な事案があり、だからこそ市民後見人の活躍支援が重要だと話されました。
また、2つめの市民後見人の可能性に関しては、各市町村が市民後見人の育成を実施すれば成年後見制度に関する市町村の体制整備に繋がる等、市民後見人の活躍が社会を変える原動力となり、場合によっては成年後見制度を変える原動力にもなりえるため、それが市民後見人の可能性だと言えるとのことでした。
基調講演2では、火宮麻衣子氏から、第2期成年後見制度利用促進基本計画における権利擁護支援に関する担い手の育成・確保や行政の取り組み、そして、地域連携ネットワークづくりの重要性について講演がありました。
市民後見人については、行政研修を終了した後、すぐに後見人等の選任に至らず活躍の場が少ないことの指摘があるとのことです。この問題を解消するため、行政研修終了者が意思決定支援など幅広い場面で活躍できるための取り組みが紹介されました。具体的には、より充実した行政カリキュラムへの見直しの検討や、行政研修終了者の活動機会の拡大、それから、市町村、都道府県による効果的な研修の実施とのことです。
続いて、権利擁護支援の地域連携ネットワーク作りの重要性について話がありました。地域連携ネットワークが構築されていると、中核機関の協議会を活用して権利擁護支援チームにより必要な支援を行うことができるとのことです。
最後に、行政における担い手の育成、確保のための取り組みの紹介として、ポータルサイト「成年後見はやわかり」が紹介されました。本人、ご家族、これから後見人になることを検討している方、自治体、中核機関向けと対象者別の提示を設けており、必要な情報を掲載しているとのことです。
基調講演3では、向井宣人氏から、市民後見人に関する家庭裁判所の取組みについて講演がありました。具体的には、市民後見人の選任イメージの共有、市民後見人へのリレー、受任者調整の重要性の3点を中心に話されました。
家庭裁判所としては、市民後見人が適した事案について市民後見人を候補者とするには、受任者調整を行う市町村や中核機関と、家庭裁判所が、市民後見人の強みや対応が困難な事案とは何か、市民後見人に必要な支援体制とは何か、どのような事案で市民後見人に活動してもらうことが適切なのか等のイメージを日頃から共有しておくことが重要と考えているとのことです。
続いて、リレー方式については、尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするために、本人の状況等に応じた後見活動を確保するためのものと考えています。本人の状況や意思も踏まえて、専門職後見人から市民後見人への交代の時期や相当性を適切に見極め、本人の状況等に応じた後見人による後見活動を確保することが市民後見人への理念を図る上では最も重要だと言えるとのことです。
最後に、受任者調整については、地域の関係者が市民後見人の強みや意義について理解を深め、地域の実情に即した形で市民後見人の活躍イメージを形成し、具体的な仕組み作りを進めていくことが重要だと考えているとのことでした。
3つの基調講演の話を聞き、共通して話題にされていたのは、市民後見人と専門職後見人に求められている活動はそれぞれ異なるということでした。特に印象に残ったのは、基調講演1の永田祐氏が話された、「弱い専門性、だからこその豊かな地域性、豊かな生活の観点」という言葉です。市民後見人にしかない強みと専門職後見人の強みをそれぞれ活かした後見活動を行えば、本人への支援ももっとよりよいものになると感じました。
令和6年3月8日(金)13時から、(公社)成年後見センター・リーガルサポート主催の令和5年度権利擁護シンポジウム「地域の権利擁護を支える市民後見人~地域共生社会の実現に向けた市民後見人の育成・活躍支援~」がAP東京八重洲にて開催されました。
私は昨年の権利擁護支援シンポジウムにも現地参加をしましたが、今年も昨年同様多くのリーガルサポート会員、他士業、福祉に係る方々がシンポジウムに現地参加されていて、権利擁護に対する関心の度合いの高さを感じました。
シンポジウムは、当法人理事長高橋隆晋による挨拶に始まり、同志社大学社会学部教授 永田祐氏基調講演1、厚生労働省社会・援護局 地域福祉課 成年後見制度利用促進室長 火宮麻衣子氏による基調講演2、最高裁判所事務総局 家庭局 第二課長向井宣人氏による基調講演3、そして、パネルディスカッションが行われました。
当法人理事長高橋隆晋の挨拶では、市民後見人に対するリーガルサポートの姿勢に言及しました。リーガルサポートでは、今後、全国各地で多くの市民後見人が誕生し、活躍できるよう支援し、地域における権利保護の充実がより一層図られるよう取り組んでいくとのことです。
基調講演1では、永田祐氏が、市民後見人が活躍することは共生社会の実現に資することにも繋がると話され、大きく2つのことが取り上げられました。1つは市民後見人の活躍の重要性、もう1つは市民後見人の可能性です。
市民後見人の大きな特徴として、同じ地域に暮らす市民として本人への寄り添い型の後見活動を行うとことが挙げられます。同じ市民として付き合いながら、意思を尊重する寄り添い型の支援は、専門職ではなく市民後見人が得意とするものです。それは、専門職後見人の活動とは異なるものです。専門職後見人が不足しているから市民後見人を必要とするのではなく、市民後見人に適切な事案があり、市民後見人の力が必要な事案があり、だからこそ市民後見人の活躍支援が重要だと話されました。
また、2つめの市民後見人の可能性に関しては、各市町村が市民後見人の育成を実施すれば成年後見制度に関する市町村の体制整備に繋がる等、市民後見人の活躍が社会を変える原動力となり、場合によっては成年後見制度を変える原動力にもなりえるため、それが市民後見人の可能性だと言えるとのことでした。
基調講演2では、火宮麻衣子氏から、第2期成年後見制度利用促進基本計画における権利擁護支援に関する担い手の育成・確保や行政の取り組み、そして、地域連携ネットワークづくりの重要性について講演がありました。
市民後見人については、行政研修を終了した後、すぐに後見人等の選任に至らず活躍の場が少ないことの指摘があるとのことです。この問題を解消するため、行政研修終了者が意思決定支援など幅広い場面で活躍できるための取り組みが紹介されました。具体的には、より充実した行政カリキュラムへの見直しの検討や、行政研修終了者の活動機会の拡大、それから、市町村、都道府県による効果的な研修の実施とのことです。
続いて、権利擁護支援の地域連携ネットワーク作りの重要性について話がありました。地域連携ネットワークが構築されていると、中核機関の協議会を活用して権利擁護支援チームにより必要な支援を行うことができるとのことです。
最後に、行政における担い手の育成、確保のための取り組みの紹介として、ポータルサイト「成年後見はやわかり」が紹介されました。本人、ご家族、これから後見人になることを検討している方、自治体、中核機関向けと対象者別の提示を設けており、必要な情報を掲載しているとのことです。
基調講演3では、向井宣人氏から、市民後見人に関する家庭裁判所の取組みについて講演がありました。具体的には、市民後見人の選任イメージの共有、市民後見人へのリレー、受任者調整の重要性の3点を中心に話されました。
家庭裁判所としては、市民後見人が適した事案について市民後見人を候補者とするには、受任者調整を行う市町村や中核機関と、家庭裁判所が、市民後見人の強みや対応が困難な事案とは何か、市民後見人に必要な支援体制とは何か、どのような事案で市民後見人に活動してもらうことが適切なのか等のイメージを日頃から共有しておくことが重要と考えているとのことです。
続いて、リレー方式については、尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするために、本人の状況等に応じた後見活動を確保するためのものと考えています。本人の状況や意思も踏まえて、専門職後見人から市民後見人への交代の時期や相当性を適切に見極め、本人の状況等に応じた後見人による後見活動を確保することが市民後見人への理念を図る上では最も重要だと言えるとのことです。
最後に、受任者調整については、地域の関係者が市民後見人の強みや意義について理解を深め、地域の実情に即した形で市民後見人の活躍イメージを形成し、具体的な仕組み作りを進めていくことが重要だと考えているとのことでした。
3つの基調講演の話を聞き、共通して話題にされていたのは、市民後見人と専門職後見人に求められている活動はそれぞれ異なるということでした。特に印象に残ったのは、基調講演1の永田祐氏が話された、「弱い専門性、だからこその豊かな地域性、豊かな生活の観点」という言葉です。市民後見人にしかない強みと専門職後見人の強みをそれぞれ活かした後見活動を行えば、本人への支援ももっとよりよいものになると感じました。