りーがるーブログ

[2024/06/17] イベント報告

令和4年度権利擁護支援シンポジウムレポート

 令和4年度権利擁護支援シンポジウム「いま、成年後見人について考える ~適切な後見人等の選任・交代と担い手の確保・育成の推進~」パネルディスカッションレポート
 

 
 令和5年3月3日、『いま、成年後見人について考える ~適切な後見人等の選任・交代と担い手の確保・育成の推進~』と題した『権利擁護支援シンポジウム』が、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが主催となって開催されました。この度、本シンポジウム内のパネルディスカッションをオンデマンド動画にて視聴いたしましたので、そのご報告をします。
 まず、本パネルディスカッションに登壇された方とその役割をご紹介します。
 
パネリスト 
安藤亨   氏(豊田市 福祉部 福祉総合相談課 主任主査)
今井末果  氏(豊田市成年後見支援センター 主査)
高江俊名  氏(弁護士)
合田明美  氏(社会福祉士)
岩屋口智栄 氏(司法書士)
 
コーディネーター
橋本健司  氏(司法書士)
 
 本パネルディスカッションは、コーディネーター及び各パネリストの自己紹介及びご本人との関わり方の紹介に始まり、以下5つのテーマにてディスカッションが進んでいきました。
①後見人候補者を推薦する仕組みと取組について
②後見人候補者を推薦する仕組みの効果と課題について
③後見人等の柔軟な交代について
④後見人等の担い手の確保・育成の推進について
⑤権利擁護支援全体の課題について
 
以下、各パートの内容について、特に印象に残った発言を中心にご報告します。
 
【①後見人候補者を推薦する仕組みと取組について】
 本テーマでは、各パネリストより自身の地域における後見人候補者推薦の仕組みについて説明がなされました。
 合田氏からは、宮崎県の高鍋町、新富町、西米良村、木城町、川南町、都農町の計5町1村の委託を受けた成年後見支援センターの紹介がなされました。地方特有の1つの行政地区だけではなく広域での成年後見支援となるので、地域(行政)によって対応の差が生じないよう留意している等といった説明がなされました。
 
【②後見人候補者を推薦する仕組みの効果と課題について】
 本テーマでは、各パネリストより自身の地域における後見人候補者を推薦する仕組みの効果と課題について説明がなされました。
 高江氏からは、リーガルサポート神奈川における後見人の立候補制の説明がなされ、現状の立候補制から申立ての際にリーガルサポート内から候補者を立てる方法に変更し、本人と後見人とのよりよいマッチングを目指したいといった展望が述べられました。
 また、安藤氏からは、各地域ごとに仕組みや何が適しているかは様々なので、本日のような場で各地域のノウハウを知り、自地域に持ち帰り活かすことが本人と候補者とのミスマッチングを避けるためにも重要だとの意見が述べられました。
 
【③後見人等の柔軟な交代について】
 本テーマでは、各パネリストより自身の地域における後見人等の柔軟な交代について説明がなされました。
 岩屋口氏からは、リーガルサポート会員が後見人となっているケースでご本人や親族と衝突や問題が生じている場合に、後見人本人に辞任を促して別のリーガルサポート会員を後見人とする運用について説明がなされました。民法上後見人は正当な理由がないと辞任ができないこととなっていますが、この正当な理由の部分を柔軟に解釈することが必要なのではないかとの意見が述べられました。
 
【④後見人等の担い手の確保・育成の推進について】
 本テーマでは、各パネリストより自身の地域における後見人等の担い手の確保・育成の推進について説明がなされました。
 合田氏からは、地域で受任可能な司法書士は4名いるが受任をお願いしても手が上がらない現状であり、受任可能な弁護士についても0名であるとの説明がなされました。今後は市民後見人へのフォローを厚くし、地域の担い手不足を補うための市民後見人ではなく、ご本人にとってより相応しい後見人の数を増やすための市民後見人となることが必要ではないかとの意見が述べられました。
 
【⑤権利擁護支援全体の課題について】
 本テーマでは、各パネリストより自身が感じる権利擁護支援全体の課題について説明がなされました。
 今井氏からは、成年後見制度に限らない権利擁護の視点を持つ人が増えることが必要であるとの意見が述べられました。また、豊田市社会福祉協議会において、インスタグラム等を活用した後見業務の活動報告を発信しており、地域の方々に後見をもっと身近なものに感じていただきたいとの想いが述べられました。
 
 以上、パネルディスカッションにおける各登壇者の意見をご紹介いたしました。上記5つのテーマに共通して感じたことは、どの地域にも課題は存在し、またその課題は地域ごとの特色もあり様々な課題が存在しているということでした。担い手不足、地域からの理解不足、本人や親族と後見人との認識の齟齬から生まれる衝突など、後見業務の奥深さを知ることのできたパネルディスカッションであったと感じました。

 
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