[2024/07/01]
四国ブロック研究大会基調講演第4分科会レポート
四国ブロック研究大会
第4分科会
「後見業務における地域的特質と課題の探求~(四国ブロック)
アンケートから浮かび上がるInsights~」レポート
令和6年4月20日、松山市総合コミュニティーセンターにて、四国ブロック研究大会が開催されました。4つの分科会のうち、第4分科会は、『「地域の後見業務の実情をデータ化」してみると何かみえてくるものがあるのか?』という着想から出発し、後見業務の実情について4県会員にアンケート調査を実施し、その集計結果から浮かび上がってきた「課題」をパネルディスカッションで掘り下げてみられました。
アンケート対象者(回答率等)やアンケート項目詳細は割愛しますが、種々のアンケート結果から抽出された課題と現状について紹介します。
■6つの課題の探求
(1)保佐・補助の受任の有無
後見に比べ保佐・補助の受任件数が少ない現状が把握できた。また保佐を受任していない会員は15~28%、補助を受任していない会員は半数以上を占めている。保佐・補助の受任件数の少なさから、もっと保佐・補助の受任について専門職に求められるのではないか。そのため、保佐・補助の受任の広がりが今後の専門職に求められるのではないか。また、受任経路として地域包括支援センターや社会福祉協議会等の自治体などからの依頼が多い支部の会員は、申立てから関わり保佐・補助を受任する機会が多いと思われるが、特定の会員に集中してしまっていることはないか。
・受任経路とも関わると考えられるが、施設や病院からの依頼の場合、後見類型での申立てが自然多くなりがちであり、また本人の死後事務を見据えての申立てという事情が見え隠れする。そうであれば、制度利用の本旨に立ち返る必要があるのではないか。
・過疎地域においては特に依頼が特定会員に集中してしまう。これも保佐・補助を受任している会員の偏りにつながっている原因と考えられる。また、事案受任の集中は、困難案件も含まれており、困難事案引き受けられる会員にも偏りが生じていることと連動していると考えられる。
(2)面会移動時間
本人への面会にかかる移動時間が60分以上要する事件を、各支部が抱えていることが分かった。四国は、都市部より電車・バス等の公共交通機関は利便性が劣り、ほとんどの会員が面会に自家用車を使用する。面会に長距離移動を要する後見等業務には、各支部の事情・地域の特性が色濃く関係しているということが浮かび上がった。
(3)本人との面会頻度
週1回以上・月2~3回の面会頻度もあれば、半年に1回という面会頻度もあった。コロナ禍以降、面会制限等もあり面会頻度はコロナ禍以前より減っており、半年に1回という頻度はこれに関係しているのか。また、週1回以上・月2~3回の面会頻度の後見等事件については、本人が在宅である可能性も高く、困難案件であることが予想されないか。
・面会頻度と移動時間については、地域の担い手不足の問題と密接に関わってくる問題だと受け止められる。
・面会頻度が多いのは、本人が在宅であることや困難事案であることが考えられる。そのような事案を受けている会員の支援も必要ではないか。
・逆に面会頻度が少ない事案については、身上保護がおろそかになっていないか確認・見直しのためにも、その理由を聞く必要があるのではないか。
(4)「受任経路」「本人の居所」
受任経路からは、自治体・病院が比較的多い支部、支部推薦が多い支部の違いが浮かび上がった。この違いは何か。そして、どのような問題点があるのか。また、受任経路が病院や施設である場合、本人の居所と一致する場合も少なくない。本人の居所選定の問題を含めて検討する。
・「65歳の壁問題」は自治体の考え方に左右される場合もあるようである。
・居所の選定は非常に重要な要素であるが、地域の事情や本人の財産状況のために選択肢が狭められていることが現状としてある。本人の居所として相応しいかという視点は持ち合わせておくのが大事であり、日頃から情報交換で選択肢を増やしておくことも必要である。
(5)「会員年齢」「受任件数」
会員の高齢による病気・死亡等による受任事件の突然の引継ぎは起こり得ることである。70代以上の会員だけでなく、これはどの世代に起こり得ることと考えるべきである。突然の引継ぎが起こった際、支部は迅速な後任の後見人等候補者選定を迫られるが、候補者がなかなか見つからないことが多い。また、アンケートから20件以上の多数事件を抱える会員が各支部に存在し、仮に多数事件を抱える会員が病気・死亡等で後見業務ができなくなった場合、やはり引継ぎは難航することが予想される。【会員年齢】【受任件数】のアンケート結果から浮かび上がった引継ぎ問題について検討し、会員自身と支部はどのような対応がとれるのか、検討する。
・「年齢」をもって新規受任を制限することは、会員の反発や受け手不足の問題もあり難しいと考える。本部でもこの点指針は示していなし。強制的な制限ではなく、会員による自主的な判断が望ましい。
・年齢的なことだけでなく病気によって急な廃業という事態が生じることは否めない。その場合、困難案件の引き受け手の問題が生じる。
・あと何件なら受任可能か「余白の確認」も必要ではないか
(6)「本人の財産」「報酬について」
特に50万円未満の本人財産の件数に比べて成年後見制度利用支援事業の件数が少ないことが分かった。香川以外の支部は報酬をもらえていない案件が存在すると思われる。一方、香川は報酬をもらえなかったことはないとあり、他の3支部との差は何が原因なのか、地域の特性を考慮しながら本人の財産と報酬について検討する。
・香川では後見制度利用支援事業が充実しており、首長申立案件限定の制限が全市町村で撤廃されていることが報酬未受領につながっていると考えられる。また、財産が少額の事案がLSに配転されない事情として、社会福祉協議会の積極的な受任によるところが大きいと考えられる。
・徳島の家裁は、後見制度利用支援事業で設定された上限額満額の報酬決定を出してくれる。他の3県は上限満額の報酬決定をされたことがない。
・高知は、本人の財産が少ないために利用支援授業の助成を受けられる場合は、家裁が本人の財産に基づき非常に僅少な金額の報酬決定をした場合、上限額から家裁が決めた報酬金額の差額分を助成する運用である。
・報酬受けられる見込みがないから申し立てにつながらないという機能不全に陥っていないかとの懸念もある。香川の運用が全都道府県で一般化し、他の報酬助成の利用も活用しやすくなるよう会として働きかけていくことが必要である。
分科会担当者からは、「このアンケート結果をLS他支部にどう共有していけるのかとの懸念あったが、これまで漠然と感じていたことと合致することも多かった。今回浮き彫りになった課題を今後も他の地域でも研究してもらい広がりがあるとよいのではないか」と締めくくられました。
第4分科会
「後見業務における地域的特質と課題の探求~(四国ブロック)
アンケートから浮かび上がるInsights~」レポート
令和6年4月20日、松山市総合コミュニティーセンターにて、四国ブロック研究大会が開催されました。4つの分科会のうち、第4分科会は、『「地域の後見業務の実情をデータ化」してみると何かみえてくるものがあるのか?』という着想から出発し、後見業務の実情について4県会員にアンケート調査を実施し、その集計結果から浮かび上がってきた「課題」をパネルディスカッションで掘り下げてみられました。
アンケート対象者(回答率等)やアンケート項目詳細は割愛しますが、種々のアンケート結果から抽出された課題と現状について紹介します。
■6つの課題の探求
(1)保佐・補助の受任の有無
後見に比べ保佐・補助の受任件数が少ない現状が把握できた。また保佐を受任していない会員は15~28%、補助を受任していない会員は半数以上を占めている。保佐・補助の受任件数の少なさから、もっと保佐・補助の受任について専門職に求められるのではないか。そのため、保佐・補助の受任の広がりが今後の専門職に求められるのではないか。また、受任経路として地域包括支援センターや社会福祉協議会等の自治体などからの依頼が多い支部の会員は、申立てから関わり保佐・補助を受任する機会が多いと思われるが、特定の会員に集中してしまっていることはないか。
・受任経路とも関わると考えられるが、施設や病院からの依頼の場合、後見類型での申立てが自然多くなりがちであり、また本人の死後事務を見据えての申立てという事情が見え隠れする。そうであれば、制度利用の本旨に立ち返る必要があるのではないか。
・過疎地域においては特に依頼が特定会員に集中してしまう。これも保佐・補助を受任している会員の偏りにつながっている原因と考えられる。また、事案受任の集中は、困難案件も含まれており、困難事案引き受けられる会員にも偏りが生じていることと連動していると考えられる。
(2)面会移動時間
本人への面会にかかる移動時間が60分以上要する事件を、各支部が抱えていることが分かった。四国は、都市部より電車・バス等の公共交通機関は利便性が劣り、ほとんどの会員が面会に自家用車を使用する。面会に長距離移動を要する後見等業務には、各支部の事情・地域の特性が色濃く関係しているということが浮かび上がった。
(3)本人との面会頻度
週1回以上・月2~3回の面会頻度もあれば、半年に1回という面会頻度もあった。コロナ禍以降、面会制限等もあり面会頻度はコロナ禍以前より減っており、半年に1回という頻度はこれに関係しているのか。また、週1回以上・月2~3回の面会頻度の後見等事件については、本人が在宅である可能性も高く、困難案件であることが予想されないか。
・面会頻度と移動時間については、地域の担い手不足の問題と密接に関わってくる問題だと受け止められる。
・面会頻度が多いのは、本人が在宅であることや困難事案であることが考えられる。そのような事案を受けている会員の支援も必要ではないか。
・逆に面会頻度が少ない事案については、身上保護がおろそかになっていないか確認・見直しのためにも、その理由を聞く必要があるのではないか。
(4)「受任経路」「本人の居所」
受任経路からは、自治体・病院が比較的多い支部、支部推薦が多い支部の違いが浮かび上がった。この違いは何か。そして、どのような問題点があるのか。また、受任経路が病院や施設である場合、本人の居所と一致する場合も少なくない。本人の居所選定の問題を含めて検討する。
・「65歳の壁問題」は自治体の考え方に左右される場合もあるようである。
・居所の選定は非常に重要な要素であるが、地域の事情や本人の財産状況のために選択肢が狭められていることが現状としてある。本人の居所として相応しいかという視点は持ち合わせておくのが大事であり、日頃から情報交換で選択肢を増やしておくことも必要である。
(5)「会員年齢」「受任件数」
会員の高齢による病気・死亡等による受任事件の突然の引継ぎは起こり得ることである。70代以上の会員だけでなく、これはどの世代に起こり得ることと考えるべきである。突然の引継ぎが起こった際、支部は迅速な後任の後見人等候補者選定を迫られるが、候補者がなかなか見つからないことが多い。また、アンケートから20件以上の多数事件を抱える会員が各支部に存在し、仮に多数事件を抱える会員が病気・死亡等で後見業務ができなくなった場合、やはり引継ぎは難航することが予想される。【会員年齢】【受任件数】のアンケート結果から浮かび上がった引継ぎ問題について検討し、会員自身と支部はどのような対応がとれるのか、検討する。
・「年齢」をもって新規受任を制限することは、会員の反発や受け手不足の問題もあり難しいと考える。本部でもこの点指針は示していなし。強制的な制限ではなく、会員による自主的な判断が望ましい。
・年齢的なことだけでなく病気によって急な廃業という事態が生じることは否めない。その場合、困難案件の引き受け手の問題が生じる。
・あと何件なら受任可能か「余白の確認」も必要ではないか
(6)「本人の財産」「報酬について」
特に50万円未満の本人財産の件数に比べて成年後見制度利用支援事業の件数が少ないことが分かった。香川以外の支部は報酬をもらえていない案件が存在すると思われる。一方、香川は報酬をもらえなかったことはないとあり、他の3支部との差は何が原因なのか、地域の特性を考慮しながら本人の財産と報酬について検討する。
・香川では後見制度利用支援事業が充実しており、首長申立案件限定の制限が全市町村で撤廃されていることが報酬未受領につながっていると考えられる。また、財産が少額の事案がLSに配転されない事情として、社会福祉協議会の積極的な受任によるところが大きいと考えられる。
・徳島の家裁は、後見制度利用支援事業で設定された上限額満額の報酬決定を出してくれる。他の3県は上限満額の報酬決定をされたことがない。
・高知は、本人の財産が少ないために利用支援授業の助成を受けられる場合は、家裁が本人の財産に基づき非常に僅少な金額の報酬決定をした場合、上限額から家裁が決めた報酬金額の差額分を助成する運用である。
・報酬受けられる見込みがないから申し立てにつながらないという機能不全に陥っていないかとの懸念もある。香川の運用が全都道府県で一般化し、他の報酬助成の利用も活用しやすくなるよう会として働きかけていくことが必要である。
分科会担当者からは、「このアンケート結果をLS他支部にどう共有していけるのかとの懸念あったが、これまで漠然と感じていたことと合致することも多かった。今回浮き彫りになった課題を今後も他の地域でも研究してもらい広がりがあるとよいのではないか」と締めくくられました。
以上