りーがるーブログ

[2024/07/23] イベント報告

リーガルサポート四国ブロック研究大会「香川県に見る成年後見制度の利用促進について」レポート

リーガルサポート四国ブロック研究大会・第1分科会・香川県に見る成年後見制度の利用促進について

 令和6年4月20日、愛媛県松山市にてリーガルサポート(以下「LS」といいます。)四国ブロック研究大会が開催されました。今回は、第1分科会の内容をレポート致します。
 
 第1分科会は2部構成で、第1部では「香川県に見る成年後見制度の利用促進について」をテーマとして、第2部では「利用促進に関する四国ブロック各県の比較並びに担い手の確保について」をテーマとして、それぞれパネルディスカッションが行われました。第1部では、弁護士の松本タミ氏、香川県社会福祉協議会(以下「社協」といいます。)の十河真子氏、LS香川県支部の小川祐樹会員がパネリストを、同支部の支部長半井雄介会員がコーディネーターを務められました。第2部では、松本タミ氏、十河真子氏、小川祐樹会員、LS徳島支部の山岡実子会員、LS高知支部の黒石栄一会員、LSえひめ支部の谷本亜希美会員がパネリストを、半井雄介会員がコーディネーターを務められました。


第1部 香川県に見る成年後見制度の利用促進について

 これまでの香川県の成年後見制度利用促進の歩みについて、説明がなされました。始まりは、日常生活自立支援事業から成年後見への移行のため勉強会を行うことを目的として平成13年7月に安心ネットが活動を開始したことだそうです。その後、香川県社協と司法書士会が作った流れに弁護士会が合流し、平成23年4月にかがわ後見ネットワークがスタートしました。かがわ後見ネットワークでは、地域ごとに専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士)の担当者を置き、権利擁護支援者からの相談に応じる地域担当制を採用しています。また、会議を行うだけでなく、社協と三士会(弁護士会、司法書士会、社会福祉士会)が知恵を出し合ったり、一緒に相談会を運営したりして、顔の見える関係作りに努力されてきたようです。香川県社協がハブとなって既存のプラットホームをうまく活用し、かがわ後見ネットワークが任意のネットワークで三士会の協力を得やすい状況だったそうです。
 
 一方で、パネリストやコーディネーターからはまだまだ課題が多いとの認識も示されました。例えば、下記のような意見が挙げられていました。
 
 「中核機関を設置したことでゴールになっていないか。前段階の議論をしっかりしているか。誰が引き受けるか決めているだけではないか。会議をして行ったことの報告をして公表して終わっていないか。中核機関の機能をどう維持改善していくか。権利擁護を進めることをどう考えるか。利用促進に今後どう関わっていくかが課題。装置を作れば動くわけではない。装置を使って保護を受けるべき人が受けられるようにすることが重要」
 
 「一つの市町で中核機関の機能の全てを担うことは難しいため、県域で行ったり、付近で人材を融通しあう必要がある。市民後見人については、研修を受けた人が他の市町に引っ越しても、そこの研修を受けなおす必要があるのは課題」
 
 「『あの市町がやっていないなら、うちもやらなくてよい』を『あの市町がやっているなら、うちの市町もやらなければならない』と考えを転換して頂く必要がある。そのためには、各市の要綱をフィードバックしていく必要がある。県庁所在地の市が積極的でない場合、危機感を持ってもらうために、先進的な市から発表してもらう方法もある」


第2部 利用促進に関する四国ブロック各県の比較並びに担い手の確保について

 四国各県における成年後見利用促進の状況・課題等について情報共有・意見交換がなされました。以下、特徴的なものを挙げます。

 中核機関の設置状況については、香川県及び徳島県では全市町で中核機関を設置しています。また、成年後見利用促進の動きに、高知県では行政書士会と税理士会が参加し、愛媛県では精神保健福祉士会が加わって活動しています。

 法人後見実施状況については、香川県では全17市町の社会福祉協議会において法人後見の受任実績があり、愛媛県においては、社会福祉協議会以外の法人後見の受任実績があることです。徳島県では、とくしま絆ネット(とくしま高齢者・障がい者権利擁護ネットワーク)が法人後見の担い手となり、虐待案件や福祉的な案件を受けているとのことです。

 市民後見人養成状況については、養成済みの市民後見人の人数、市民後見人として活動されている方がいるかどうか等につき、自治体によって様々でした。また、市民後見人に監督人が選任されたり、市民後見人としては活動していないものの法人後見支援員や日常生活自立支援事業の生活支援員として活動している自治体があるとのことでした。市民後見人選任の実績がない自治体も多いですが、これに関し、何かあったときに責任が負えないため、躊躇しているとの不安が挙げられていました。

 成年後見人等に対する報酬助成については、香川県では、全17市町で首長申立事例に限る等の制限は撤廃済みです。一方、香川県以外の各県では、首長申立てに限定している市町村があり、受任者調整が困難になるとの問題点が挙げられていました。この点については、三士会等が全国的に取り組むべき課題のように思われました。

 その他、パネルディスカッションの中では、下記のような課題が挙げられていました。
・利用促進会議や協議会等の会議は繰り返すが、動きが進まないこと
・中核機関を整備していない自治体では、利用促進会議に担当者が参加しない、あるいは参加しても新人職員が来るなど、成年後見利用促進への取組みについて、自治体の二極化が進んでいること
・規模の小さい自治体では、「うちにはそういう相談(成年後見に関する相談)がない」という担当者がいること。このような担当者へのアプローチの仕方として、災害対策とか日常生活自立支援事業とか得意なところからアプローチしてみるとか、数値に基づいて潜在的なニーズについて説明してみるなどの方法が提案されました。


終わりに

 四国各県に限定しても、地域・自治体によって成年後見利用促進の状況や課題は様々でした。印象的だったのは、担い手の確保に関して、「市民後見人に後見を行ってもらうことが、何か特別な人に行わせるという錯覚に陥っていないか。監督が必要な人を養成するのか。社協が監督を行えるのか」という疑問が出されていたことです。市民後見人がふさわしい案件については、恐れず市民後見人を選任し、または市民後見人へのリレーを推進していく、このことが成年後見利用促進において求められる次の段階のように思われました。
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