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[2024/09/18] イベント報告

四国ブロック研究大会 第3分科会 「監督機能から考える任意後見契約~安全性と制度普及との調和に向けて

四国ブロック研究大会 第3分科会
「監督機能から考える任意後見契約~安全性と制度普及との調和に向けて」レポート(後編)
 
 第2部ではパネルディスカッションが行われ、パネリストとして、岸川久美子氏(リーガルサポート利用促進法対応委員会副委員長)、上山浩司氏(日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部任意後見ワーキングチーム座長)、勝猛一氏(リーガルサポート利用促進法対応委員会委員)。アドバイザーとして黒田美亜紀氏(明治学院大学法学部法律学科教授)。指定発言者として、大貫正男氏(リーガルサポート相談役)、松井秀夫氏(リーガルサポート相談役)、そして、中野篤子氏(リーガルサポート常任理事)がコーディネーターを務められました。
「主に任意後見監督に焦点を当て、会員アンケートや諸外国の動きも踏まえつつ、任意後見制度が、より多くの制度利用を希望する人に活用されるために、私達は、どのような取り組みができるのか」をテーマにパネルディスカッションが進行していきました。
 
第1部でご登壇いただいた、黒田氏より、諸外国の制度からみた使い易さと、本人の保護のバランスについて、どのように考えるかという問題について、考え方や価値観の違い等、国民性の違いは大きいと思います。ドイツの事前配慮代理権のようにほぼ監督なしという制度は、日本では心配で使えないと考える人も多いと思います。任意後見制度には何らかの監督は必要だとは思いますが、監督には濃淡があっても良いと考えます。もう少し本人の意思を尊重して監督に段階を設けても良いのではないかと感じます。ドイツやフランス、イギリス等では監督は絶対に必要とは考えられていません。専門職が任意後見人の場合には、専門職団体やリーガルサポートの監督を受けおり、更に監督人を選任する必要があるのか?と個人的には思います。不正があるかもしれないから監督を厳重にするのは、利用しやすい制度には繋がって行かないと思います。日本では、公正証書で契約を締結して、それが登記されて、任意後見監督人の選任を申し立てて、選任されて、登記されて、やっと発効するという非常に複雑で分かりにくい制度を、本人や任意後見人となる親族等が、正しく理解して契約を締結している人は少ないと思います。現在の監督よりも簡易な形に変えていくことで利用し易くなり、任意後見の利用促進に繋がっていくと考えますと述べられました。
 
次に、任意後見監督の在り方について、法人として監督を受任されている東京支部の取り組みについて、東京支部の上山氏より、あるべき姿としての契機となればということで、お話がありました。東京支部では2つの法人監督が機能しています。
1つ目は、任後見契約発効前の任意代理契約発効時における法人監督です。いわゆる三面契約です。契約の際に当事者として任意代理監督をお引き受けし、本来受任者を監督すべき委任者のサポート的な監督を行っています。任意代理契約の際にリーガルサポート法人を任意代理監督とする三面当事者による契約を締結するのが支部会員のルールとなっていますので、支部会員にはその効用について説明するようにお願いしています。任意代理監督は監督能力が十分でない方の監督をサポートするのみではなく、任意後見を発効すべきかどうかという場面において、受任者のみならず監督担当者もその判断をするという効果が期待できます。実際に、委任者に「まだ発効しなくていいですよ。」と言われた受任者と委任者との信頼関係が壊れてしまいかねない重要で難しい場面において、受任者が法人監督の監督担当者と一緒に、本人に説明することによって任意後見発効に結び付くというケースが東京支部では少なからずあります。2つ目は、任意後見発効後の任意後見監督人としての法人監督です。これは東京家裁が積極的に運用してくれる扱いなので、前述の任意代理監督を法人で引き受けている事実を家裁に評価して頂いているものと認識していますと述べられました。。
この東京支部の取り組みについては、任意後見監督人の申立権者の拡大についても議論されているところであり、リーガルサポートの関与の可能性について、東京支部の取り組みは非常に参考になりそうですとの中野氏のコメントがありました。
 
つづいて、岸川氏より、法務省の民事局が行った調査では、親族が任意後見の受任者である契約が全体の63%であることが分かっています。親族が任意後見人で専門職が任意後見監督人の場合に、専門職の多い地域について、大阪家庭裁判所管内では令和5年から法定後見の後見類型に限られていますが、総合支援型監督人の運用が始まっています。親族が成年後見人に選任された場合に専門職を監督人に選任して約9か月を目途に親族後見人に基本的な後見業務について助言、支援を行い最終的には、親族後見人に独り立ちをしてもらうというものです。リーガルサポートに推薦依頼があったものしかわかりませんが、約70%について期間経過後に監督人は辞任し、親族後見人が単独で後見業務を行っています。一方8%の事案では親族後見人は独り立ちできず定期監督型の後見監督人が引き続き監督を行っています。
法定後見について親族は申立時にある程度調べて必要性を感じて後見を利用するため、ある程度の知識を得ているように思いますが、親族間で締結された任意後見契約では締結時に、発効後の具体的な役割について知識を得ずに任意後見を保険的な感覚で契約されているのも中にはあるようです。このような形で選任された任意後見監督人については、総合支援型の監督人としての役割が求められると思います。専門職が多い地域では直接監督人として専門職が関わることができますが、専門職が少ない地域では、市町村内に専門職がいない地域もあり、そのような地域では、親族の任意後見人については、社会福祉協議会等を任意後見監督人に選任し、専門職は任意後見人に対する後方支援として専門相談に応じる体制を敷く、というのが有意義ではないかと思いますとの意見を述べられました。
 
上山氏より、リーガルサポートは、任意後見監督を法人が行うことと、会員の執務管理を行っていますがこの2つを同じ法人が行っていくことの効果について、任意後見監督を法人が行うことによって監督業務自体が平準化されるということが実感できます。専門職の場合、不正防止を監督することが中心となりますので、リーガルサポートの執務管理を通じて契約時から受任状況を把握していることは非常にスムーズな監督に移行できること、また、2つの法人監督が相互に作用することにより委任者が得られる安心感は大きいのではないかと思います。任意代理から任意後見への発行の上部が変わっても監督人が変わらない監督の連続性が維持できますと述べられました。
監督については担う監督機関ということについても、今後の法改正の動きと併せて検討していく必要があると思っています。ドイツの仕組みは非常に手軽でハードルが低いので、必要な人が利用しやすい、それがこのような利用件数の多さに繋がっているという印象を持ちました。日本でも、もっと軽くて利用し易い任意後見のニーズはあるのではないでしょうか。現行法の家庭裁判所が任意後見監督人を選任すること。もちろんそういう任意監督人の選任を求めている人もいるかもしれませんが、それとは異なる監督の仕組みも検討する余地はありそうですと中野氏はコメントされました。
 
最後に、「われわれが任意後見業務に取組むためにどうすればよいか」について、
会員アンケートから、任意後見制度のメリットについてのキーワードは、「本人の意思・本人の希望・本人の意向・信頼関係・後見人を選べる」でした。デメリットのキーワードは「監督人の報酬・発効のタイミングが難しい・取消権がない・本人が理解しにくい制度・手続きが煩雑」おそらく皆さんが想像していた結果と同じだったと思います。
任意後見契約とともに締結した契約については ①見守り契約 ②財産管理等委任契約 ③死後事務委任契約 ④遺言 を締結している会員が多くみられました。リーガルサポートでは、任意後見契約とこれらの契約を3点セット、4点セットということでパンフレットを作成して提案しています。在り方研究会では、任意後見契約のみに焦点を絞って検討が重ねられていますが、リーガルサポートでは、依頼者とその親族等や財産に着目して、その方の総合的な支援策を検討してきました。このことは、リーガルサポートの任意後見契約の特徴になっていると思います。会員も更に親族・相続法についての研鑽を積むことが必要ですし、民事信託の新しい考え方も取り入れていくことも必要だと考えます。最後に「リーガルサポートを予備的候補者とできる検討をお願いしたい」との岸川氏の考えを述べられました。
会員アンケート結果について、上山氏より、任意後見を受任しない会員の気持ちを垣間見ることができました。少なくとも東京では任意後見契約を締結したい委任者は多いと思います。後見人はどうあるべきか、誰を後見人にしたいかというご依頼者のニーズに応えられるのは「任意後見」だと思います。リーガルサポートの会員が選ばれる後見人になることを任意後見で実現していけたらと思いますとコメントされました。
つづいて、勝氏より、700万人が認知症になると言われている中で自分が認知症の心配をされている方は多いと思います。社会から必要とされ、ご本人方に本当に喜んでいただける仕事です。任意後見は、お元気な間の見守りから、認知症になり死亡までの間の任意後見、死亡後の死後事務、遺言執行までやることがあります。長いスパンで関わっていく仕事としてやりがいがありますと熱く語られました。
 
任意後見制度のこれからについて、登壇者の方々より、次のコメントがりました。
岸川氏より、リーガルサポート会員が任意後見を積極的に受けることにより、国等に声を挙げられるのではないかなと思います。
勝氏より、高齢化社会で必要とされている制度です。専門職がたくさん受任し、経験していかないと高齢者は助からない。相談する先がないから、使いやすい制度にすることが大事です。
上山氏より、今できることは何だろう、特にリーガルサポートができることは何だろうと考えたときに、異論はあると思いますが、リーガルサポートが任意後見監督人を引き受けた時の報酬額を審判額の半分しか受け取らないとすることはできると思います。これは十分公益に資するのであり、その結果、会員のメリットになります。このように思い切ったことを実現できたらなと思います。
黒田氏より、成年後見制度は司法書士の方々がある程度引っ張ってきたところがあります。ディスカッションの後半では積極的な提言もなされ、大変頼もしいと感じております。私が司法書士の皆さんにお願いしたいことは、日本では、親族後見人に対する支援策として相談先がなかったりするので、そうしたところを手厚く支援していくことが、将来的に任意後見制度を含めた成年後見制度を広めていくことに繋がると思います。法制度の行方はなかなか見えませんが、本人の意思を尊重して、現状の法定後見については、例えば本人が法定後見人の希望を述べることができるような、任意後見化というような現象が起こるのではないかと思います。任意後見については監督が重た過ぎるという課題は認識されていますので、これがどのようなデザインに変わるのか読めないところですが、皆さんからアイデアをいただき今後、私自身も提言ができればと思います。今後も情報共有、情報交換等させていただければと思っています。
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