[2016/07/26]
第5回研究大会レポート 第1弾!!
平成28年6月18日、グランドハイアット福岡にて、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートによる第5回研究大会が開催されました。リーガルサポートでは、2年に一度、成年後見制度に関する最新のトピックを研究大会で扱い、会員に公開することで会員の研さんに努めております。今回は、3つの分科会で研究発表がなされました。そこでこの第1弾を皮切りに、分科会の模様を3回に分けて紹介いたします。
第1弾! 第1分科会「長期にわたる障害者の支援」レポート
成年後見制度の普及が進むにつれ、高齢者のみならず障害者の事件を受任している会員が年々増えています。また、我が国は障害者権利条約を批准しております。条約の理念を学び、具体的な事例をもとに実践者としての悩み・課題を会員と一緒に考える場として「長期にわたる障害者の支援」をテーマに第1分科会が開催されました。
1.障害者権利条約と成年後見制度の関係
◆まず、障害者権利条約批准までの流れ、理念、当該理念と比較した我が国の成年後見制度の課題について発表がされました。当該条約の求めるものとして、①障害者の状況に応じた個別の対応があります。ところが、日本の成年後見制度は、後見・保佐・補助の三類型のみで、オーダーメイドとは言い難く、いわば既製服、型にはめこむ法制度になっています。また、②条約では可能な限り短期の支援であるべきと謳われています。しかし、障害者支援の対象者は若年であることも多く、現実は本分科会のテーマにあるとおり「長期」の支援となり、条約の求めるものと齟齬があります。そのうえで、合理的配慮を意識した支援が行われているか、また代理権行使と意思決定支援についてのバランスの難しさ等の問題提起がなされました。
◆「障害者の支援に関するアンケートの集計結果」についての報告
上記を踏まえて、「障害者の支援に関するアンケートの集計結果」についての報告がなされました。当該アンケートは、障害者支援の実態をさぐるべくリーガルサポート福岡支部 社員総数427名 名簿登載者257名(平成27年11月時点)を対象にアンケートがなされたものです。全20問に対する回答を通して見えてきた課題の一部を紹介致します。
①最高裁判所事務総局家庭局の概況と比較すると、20代から60代が全体の8割を占めており本人の年齢が若く、それゆえ支援が長期化すること ②本人の障害・病気に関する支援者の知識・理解が不足していること ③保佐・補助類型の事件が多いこと ④在宅支援が多いこと ⑤現在は把握できてないが、長期化ゆえに潜在的な課題があることを後見人が想定できていない事件が見受けられること。また自由記入欄の回答として会員による本人の意思決定支援の工夫の具体例が紹介されました。
2.シンポジウム
パネリストとして登壇した会員の経験をもとに「実践者」としての多くの事例紹介及び活発な意見交換がなされました。ここでは、分科会のテーマにある「長期」というキーワードに絞って紹介致します。
障害者の支援は、長期の支援になることが多いため、「本人を知ること」が重要になるのは通常の後見業務と変わるところはありません。ただし、漠然と本人を知ろうとするよりも、まず本人の病気・障害についての理解がコミュニケーション向上のための鍵になることが指摘されました。
「長期にわたる支援」ということは、本人の成長だけでなく、本人の置かれた環境も変化していきます。現在は、頼れる親族が死亡・判断能力を失う場合もあります。支援の場所が在宅から施設になる場合もあります。そして、支援が長期にわたるということは、支援する我々司法書士の置かれた環境も変わりうるということです。妊娠、出産、病気、親の介護、転居などは長期にわたる支援ゆえに起こりえます。だからこそ、本人との信頼関係の構築は大切だが「わたしでないとダメという状況をさけることが必要」という意見が示されました。
おわりに
監督責任が問われるニュースがある中、親亡き後問題で悩まれているご家族の方も多いと思います。どうかご自分独りだけで全てを抱えこまれないでください。また、自治体のみなさまも後見の申立て、専門職への引継ぎがゴールではありません。障害という障壁は、社会そのものが生み出しているという考え方があります。当該障壁を除去するためには、ご家族だけでなく、自治体、司法書士や社会福祉士をはじめとする専門職、地域住民を含めた関係者すべての協力・ネットワークの構築が不可欠になります。我々リーガルサポート会員も含めて特定の個人の支援だけではなりたたないということです。みなさまのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
第1弾! 第1分科会「長期にわたる障害者の支援」レポート
成年後見制度の普及が進むにつれ、高齢者のみならず障害者の事件を受任している会員が年々増えています。また、我が国は障害者権利条約を批准しております。条約の理念を学び、具体的な事例をもとに実践者としての悩み・課題を会員と一緒に考える場として「長期にわたる障害者の支援」をテーマに第1分科会が開催されました。
1.障害者権利条約と成年後見制度の関係
◆まず、障害者権利条約批准までの流れ、理念、当該理念と比較した我が国の成年後見制度の課題について発表がされました。当該条約の求めるものとして、①障害者の状況に応じた個別の対応があります。ところが、日本の成年後見制度は、後見・保佐・補助の三類型のみで、オーダーメイドとは言い難く、いわば既製服、型にはめこむ法制度になっています。また、②条約では可能な限り短期の支援であるべきと謳われています。しかし、障害者支援の対象者は若年であることも多く、現実は本分科会のテーマにあるとおり「長期」の支援となり、条約の求めるものと齟齬があります。そのうえで、合理的配慮を意識した支援が行われているか、また代理権行使と意思決定支援についてのバランスの難しさ等の問題提起がなされました。
◆「障害者の支援に関するアンケートの集計結果」についての報告
上記を踏まえて、「障害者の支援に関するアンケートの集計結果」についての報告がなされました。当該アンケートは、障害者支援の実態をさぐるべくリーガルサポート福岡支部 社員総数427名 名簿登載者257名(平成27年11月時点)を対象にアンケートがなされたものです。全20問に対する回答を通して見えてきた課題の一部を紹介致します。
①最高裁判所事務総局家庭局の概況と比較すると、20代から60代が全体の8割を占めており本人の年齢が若く、それゆえ支援が長期化すること ②本人の障害・病気に関する支援者の知識・理解が不足していること ③保佐・補助類型の事件が多いこと ④在宅支援が多いこと ⑤現在は把握できてないが、長期化ゆえに潜在的な課題があることを後見人が想定できていない事件が見受けられること。また自由記入欄の回答として会員による本人の意思決定支援の工夫の具体例が紹介されました。
2.シンポジウム
パネリストとして登壇した会員の経験をもとに「実践者」としての多くの事例紹介及び活発な意見交換がなされました。ここでは、分科会のテーマにある「長期」というキーワードに絞って紹介致します。
障害者の支援は、長期の支援になることが多いため、「本人を知ること」が重要になるのは通常の後見業務と変わるところはありません。ただし、漠然と本人を知ろうとするよりも、まず本人の病気・障害についての理解がコミュニケーション向上のための鍵になることが指摘されました。
「長期にわたる支援」ということは、本人の成長だけでなく、本人の置かれた環境も変化していきます。現在は、頼れる親族が死亡・判断能力を失う場合もあります。支援の場所が在宅から施設になる場合もあります。そして、支援が長期にわたるということは、支援する我々司法書士の置かれた環境も変わりうるということです。妊娠、出産、病気、親の介護、転居などは長期にわたる支援ゆえに起こりえます。だからこそ、本人との信頼関係の構築は大切だが「わたしでないとダメという状況をさけることが必要」という意見が示されました。
おわりに
監督責任が問われるニュースがある中、親亡き後問題で悩まれているご家族の方も多いと思います。どうかご自分独りだけで全てを抱えこまれないでください。また、自治体のみなさまも後見の申立て、専門職への引継ぎがゴールではありません。障害という障壁は、社会そのものが生み出しているという考え方があります。当該障壁を除去するためには、ご家族だけでなく、自治体、司法書士や社会福祉士をはじめとする専門職、地域住民を含めた関係者すべての協力・ネットワークの構築が不可欠になります。我々リーガルサポート会員も含めて特定の個人の支援だけではなりたたないということです。みなさまのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。