りーがるーブログ

[2016/08/09] 報告

第5回研究大会リポート 最終回の・・・ 第3弾!!

第3弾! 第3分科会「市民後見人育成事業と司法書士」レポート
 
   第3分科会は「市民後見人育成事業と司法書士」がテーマでした。高齢化の進展に伴い、認知症高齢者の数は2025年には700万人を超えると推定されています。財産管理・身上監護において支援を要する高齢者の急速な増加に対し、弁護士・司法書士・社会福祉士等の専門職後見人だけでは将来成年後見制度を担う人材として不足すると考えられています。
 リーガルサポートは、成年後見制度を担う人材の不足に危機感を持ち、市民後見人育成事業(以下、「当該事業」といいます)への取組みを開始しています。
   本分科会では、当該事業へのリーガルサポートの取組み、当該事業に関する自治体に対するアンケート結果の報告、幾つかの自治体における当該事業への司法書士の関わり等が紹介されました。今回は、各自治体の取り組みを中心に分科会の模様を紹介します。

◆リーガルサポートの市民後見人育成事業への取組み
リーガルサポートは、市民後見人養成講座のテキストの作成、自治体向けのセミナーの開催、リーガルサポート各支部への情報の提供と協力関係の構築等を通じて、市民後見人を育成しようとする全国の自治体の事業を支援しています。また、平成26年5月には、市民後見人及び市民後見人育成事業のあるべき姿を対外に表明するため、市民後見憲章案を策定し、公表しています。

◆各自治体における事例の紹介
   本分科会では、大牟田市・山梨県笛吹市・愛知県春日井市における3つの事例が紹介されました。
   まず、大牟田市について。大牟田市は、全国的に見ても高齢者率の割合が高い街です。高齢者が安心して暮らせる街づくりを目指し、平成26年4月に設立された大牟田市成年後見センターに先んじて、大牟田市主導の「成年後見支援に関するあり方の検討会」が中心となって平成21年に初めて市民後見人養成講座を開催して以降、毎年継続して講座を開催しています。大牟田市成年後見センターが設立されてからは、同センターが市民後見人の養成・登録、市民後見人を活用した法人後見受任、成年後見制度の普及・啓発に積極的に取り組んでいます。その中で司法書士は、養成講座の準備から講義の担当、後方支援等、活動の中心を担っています。
   次いで、山梨県笛吹市の事例においては、知的障害を持つ子の親が高齢化して認知症となり、後見が必要となる状況が生じていていること、「親亡き後の課題フォーラム」が開催されたこと等が市民後見人養成の経緯として紹介されました。地域に密着し、本人に寄り添った支援が可能な市民後見人の育成が必要とされているとのことです。こうした状況を受けて、社会福祉協議会が主導となって法人後見、市民後見人養成講座の開催に積極的に取り組み、日常生活自立支援事業を市民後見人養成の現場研修として利用し、研修の修了者に生活支援員・法人後見支援員・市民後見人として活躍する機会を提供しているとのことです。このような取組みや社会福祉協議会の法人後見を家庭裁判所が評価し、社会福祉協議会のサポートを条件に家庭裁判所が市民後見人を選任したとされています。こうした市民後見人の養成、日常生活自立支援事業から後見への移行の際の継続的な支援、後見センターの運営等に司法書士が関わってきたことが紹介されました。
   最後に、愛知県春日井市の事例においては、知的障害者の集合施設が存在するという特殊性により、知的障害者の成年後見人になる例が多いことが紹介されました。法人後見の支援員という形式が多いですが、これまで30人以上の市民後見人が誕生しているとのことです。また、市民後見人養成研修について、実施団体の選定から実施に至るまでの経緯や、養成研修受講者のモチベーション維持のためのフォローアップ研修等、養成研修後市民後見人が実際に選任されるまでのロードマップ作りやロードマップに基づく活動について紹介がなされ、それらに司法書士が深く関わってきたことが紹介されました。


◆ 最後に
   分科会の最後に、市民後見人の取り組みの推進に向けて大阪市立大学教授岩間伸之氏より総括講義がなされました。同氏によると、社会の高齢化と人口減少により将来日本の社会保障が立ち行かなくなり、公助の範囲が減少し市民同士が互いに支え合う互助・共助に頼らざるを得なくなるとのことです。近隣住民や地域におけるボランティア等が関与する権利擁護という広い視点から、市民後見人育成事業を進めて行く必要があり、行政には自助・互助・共助の下支えとなる役割が求められて行くことが説かれました。
   市民後見人育成事業に関するアンケートへの回答において、当該事業に関し自治体から「研修講師の派遣」、「事業機関立ち上げ時の支援」、「事業実施機関における運営委員、相談員等の派遣」等をリーガルサポートに求める要望が挙げられました。リーガルサポートは、これらの要望に応えることで各自治体が抱える不安が解消されるよう努力し、また関連機関と連携して地域に密着した市民後見人の育成に今後も取り組んで参ります。




  大牟田市の事例を紹介する竹本安伸会員
   (大牟田市成年後見センター所長)


 
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