4月28日(火) 快晴

 一山さんの日射病がひどい。目が見えないほど顔が腫れている。昨日の雪上の休憩が影響しているのだろう。歩行は出来るので予定通りでかけることにした。彼は私たちのうちでは最年長であるが一番元気が良い。

 C1から1時間ほどは緩い雪上の登りであったが、その先はガンジャ・ラへの急登になる。岩壁沿いの急な雪面をシェルパ達が空荷でラッセルする。ヤンプーに雪崩の危険はないのかと聞いたが心配ないと言う。確かに雪面は落ち着いているようであるが、下から見ていると心配になるような急斜面である。彼はこのコースについては経験者であるのでその意見に従う。それにしてもシェルパ達の行動は称賛に値する。体格は私たちとそれほど開きはないようであるが強靭さは桁違いである。違いは肺活量にあるようだ。ヒマラヤ登山においては、登山の規模に関係なく、彼らの協力無しにはどの隊も成功は覚束ない。岩壁の左を回り込み、その上に出て岩稜の上部にテントを設営(C‖、5200m)した。

 午後から氷河を偵察する予定であったが休養に充てる。

 C2 をめざし

 C2
 

 一休みしていると「ヒィョー」と言う鳴き声に驚いて見上げるとキャンジンゴンパに居たカラスに似た鳥が飛んでいる。この高度まで良く飛んできたものだ。ヤンプーに鳥の名前を聞くと簡単にカラスだと答えた。カラスに似ているが体は小さく嘴も黄色い。また鳴き声がまったく違っている。嘴が黄色いので私たちは子供のカラスかと笑っていたのだが、この高度を軽々と飛翔する姿を見るとなんだか体まで大きくなったように見える。

 夕食の用意をしていると隣にテントが一つ張られた。ヤンプーが外国人が来たと知らせてきた。私たちも外国人なのに彼はすっかり私たちと同化しているのかなと思っていると、彼もこちらの気持ちをどのように察したのか知らないが、白い外国人が来たと言い直した。若いカナダ人(キャンジンゴンパで会った人とは別人)と地元の青年2人の合計3人である。テントも綻びが目立ち強風が吹けば裂けるのではないかと心配になるようなテントである。このようなところで他のパーティに会うなど考えてもいなかったので驚いた。彼らは明日ナヤ・カンガに登ると言う。私たちは明日氷河の偵察と北東山稜への取り付き点の確認である。先を越されて大事なものを横取りされたような気持ちになった。

 藤田さんはB・CからC1に入る。

 ヤンサチエンジ

 キムシュンとキムシュン氷河
 
 
もどるつづき