4月29日(水) 晴

 今日は山頂へのコースの偵察と高度順応に充てる日である。 隣のパーティは7時頃出掛けた。山頂を目指すにしては遅い出発かと思えた。

 C‖から急な雪稜を上り氷河に出る。心配していたクレバスも今年の大量の積雪に埋もれている。雪が多いと良いこともあるものだ。ただ進行方向の左手、東山稜の山腹の雪面に亀裂が見えるのが気に掛かる。氷河の対岸はすぐ目の前に見えるのだがなかなか近づかない。この氷河の横断に1時間を要した。明日も同じ位の時間は掛かると見なければならないようだ。小さなデブリ(雪崩の跡)を越えて北東山稜の側稜に取り付く。側稜は小岩や土砂の混じったザラザラの岩稜で始末に悪い。距離は短いが油断のならない岩場である。この岩稜を終えると北東山稜への雪稜となる。この雪稜を少し上ったところで、一山さんと私は下山。ヤンプーとプルパはもう少し上の山稜にザイルをフィックス(固定)するため登りつづけた。

 

 氷河での休憩

 側稜への取り付き

 

 下山して氷河の中央部に差し掛かった頃、今朝山頂を目指したカナダ人達が降りてきた。まだ午後1時である。頂上まで登ってきたのだろうか、随分早い。

 ネパール人二人は足早に去り、遅れてカナダ人がいかにも疲れた表情で通りかかった。「頂上まで行ったのか」と聞くと短く「イエス」と答えた。「おめでとう」と言うと、「有難う、疲れた」と短く返事をして先に行ってしまった。6時間で頂上まで往復したことになる。私たちにはとてもそのような体力はない。

 C‖へ帰るとC1から藤田さんが上がってきていた。久しぶりに3人が揃ったが藤田さんは体調が万全でなく頂上へ登ることは諦めて私たちをサポートして呉れることになった。

 カナダ人たちは今日中にキャンジンゴンパまで降りると言って撤収していった。

 降りてきたヤンプー達と明日の行動について打合せ。明日は4時出発と決める。また人数が増えたので今後の食料に付いても彼らに全部を公開して理解を求め、振り分けることにした。 

 
 
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