9月13日

 今日は日曜日で仕事がないので斎藤先生と町に出た。御希望ならば、通訳と車をつけると言われたが、ツアーコンダクターの私としては、経験上、初めて訪れる町の様子を把握するためには、自分の足で歩いてみるのが一番なので、早くこの町に慣れるため、あえてお断りした。が、一歩外に出た途端、あまりの寒さに驚き、車を断った事をちょっと後悔したが、ウインドブレーカーとコートを着込んで、覚えたてのモンゴル語を試すべく出かけてみた。

 大通り(東京でいえば銀座のような所)に出たが、日曜日なのに人通りがまばらだ。

 唯一のデパートも閑散としている。まだまだ市場経済が機能していないのだろう。私は世界中どこの町でも現地人に間違われるのだが、ここでもやっぱりモンゴル語で声を掛けられた。ダワーという名前の24才の女の子で、世界史の教科書に出てきたチンギスハーンの顔によく似ている。せっかくだから、お昼を食べようということになり、現地のバス(もみくちゃ状態なのに、車掌がしっかり料金を取りにくる)に乗ってレストランヘ。ボーズ(豚まんの中身が羊)やス一ティーツァイ(塩味のミルクティー)にトライしてから、ガンダン寺というチべット仏教のお寺へ。この寺は、1930年代に宗教が弾圧されていた時期も、モンゴル唯一の仏教寺院として宗教活動が許可されていた寺で、民主化を経た今日では仏教再生の発信基地となっている。

 

 ガンダン寺にて

 マニ車と民族衣装デールを着たおばあさん

 

近年は盛んな仏教復興により、ウランバートル市内だけでも寺院の数が20にのぼるそうだ。寺院内で大小様々な10センチから数メートルまで)マニ車を見かけた。これは回転するようになっている円筒で、筒の内外両側にお経(スートラ)が書かれていて、それを回すと功徳があるといわれている。マニ車を回す人々の姿を見ていると、社会主義体制下で表面的には否定されてきた宗教も、民主化と共に活力を取り戻しつつあるのを感じた。ガンダン寺を後にして、町の外れを歩いているとゲル(円形式移動住居)を見かけた。ガイドブックによると、モンゴルの草原を旅行していて一休みしたくなった時にゲルを発見した場合は、安心してゲルに入り、そこに置かれている食べ物や飲み物を頂いでよいという昔ながらの習慣があるそうだ。

 厳しい大自然の中で、お互い助け合って生活するため、見知らぬ旅人が家族のいない間に訪れても大丈夫なように、出かける時に食べ物や飲み物を用意してゲルには鍵を掛けないでおくというものだ。ウランバートルでは失われつつあるというこの習慣の話をタワーにすると、彼女はゲルに近づいてドアをノックする。どうやら日本から来たお客さんだと説明しているらしい。他人の家に突然入る事に躊躇しながらも、好奇心には勝てず中に入ってみると、若い女性が二人いて、固くて酸っぱいチーズを勧められた。丁重にお礼を言ってから失礼したが、貴重な経験だった。

 

 
 
もどるつづき