多重債務問題について
多重債務は、その現状と原因に真剣に向きあえば、必ず解決できる問題です。あきらめて現実から目をそらしたり、逃げてしまってはなにも解決しません。まずは、現実をしっかり見つめることから始めていきましょう。
借金問題を解決するには、あなたの状況に応じた法的な判断が必要となりますので、司法書士や弁護士に相談することをお勧めします。
質問一覧
サラ金から借金を繰り返してしまい、返済ができません。
他から借りて返済することは、借入先や借金を増やしてしまうだけで、何の解決にもなりません。
まず、あなた自身の現状をしっかり把握することが大切です。家族で収入がどのくらいあって、生活費にはいくら必要なのか。借金はどれだけあって、月の返済額はいくらか、ずっと支払っていけるのか。1か月分の家計表と、借入先の一覧表を作って見直してみましょう。
必要な生活費と返済金の合計が、月の収入を上回っているなら、あなたの借金は支払不能、もしくはそうなるおそれのある状態と言えるでしょう。
債権者からひどい取立てを受けて困っています。
債権者の取立てには、貸金業法に定められた規制があります。
例えば、暴力的な態度をとったり、親兄弟であっても保証人でない人に対し取立てをしたりすることは、処罰の対象となります。また、債務整理について相談を受け、その依頼を受けた司法書士や弁護士から、その旨の通知を受けた後は債務者に直接連絡することも禁止されています。
債権者の取立行為の規制の具体的内容については
こちらを参照してください。
サラ金業者やクレジット会社などの貸金業者は、都道府県知事や財務局の監督を受けて営業しています。違法な取立行為を受けた場合は、すぐに都道府県の金融課や財務局に実状を説明し、行政指導をしてもらうことができます
貸金業者の登録については、各県や財務局のホームページを参照してください。
債務整理の方法には、どのようなものがありますか。
通常、法的な債務整理には、次の4つの方法があります。
- (1) 任意整理
- (2) 特定調停
- (3) 個人債務者再生
- (4) 破産
どの手続きがあなたの問題解決に一番良いかを一緒に考えるために、司法書士や弁護士に相談されることをお勧めします。
任意整理というのはどのようなものですか。
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉して、債務額を確定し返済方法の合意をする方法です。無理のない返済計画を立てた上で、次のような内容の和解ができるよう、債権者と交渉していきます。
- (1) 契約当初からの取引履歴を開示すること
- (2) 利息制限法所定の利率(年15%から年20%)に引き直して、元本への充当計算をすること
- (3) 分割払いの場合も、遅延損害金や将来の利息を付けないこと
※分割払いの場合は、3年から5年で支払い終えることが目安になります。
なお、任意整理は話し合いですので、交渉がまとまらず和解できないこともあります。また、債務者本人が交渉しても債権者が応じない場合がほとんどですので、認定司法書士や弁護士へ依頼されることをお勧めします。
特定調停というのはどのようなものですか。
特定調停とは、簡易裁判所に申し立て、調停委員を交えて債権者との間で債務額を確定し、返済方法の合意をする裁判所を利用した債務整理の方法です。
任意整理と同じように、無理のない返済額で合意することが大切です。特定調停も、任意整理と同じく債権者と返済の合意をする手続きですので、合意がまとまらない場合(調停不調といいます)もあります。しかし裁判所が関与した手続きですので、債務者本人が申立てをした場合でも、任意整理よりは合意がまとまる可能性が高いと思われます。
ただ、任意整理と一番異なる点は、調停成立で作成される調停調書には判決と同様の効力がありますので、調停の内容どおりに返済ができないときには、すぐに給料の差押えなどを受けるという不利益があることです。
個人債務者再生というのはどのようなものですか。
個人債務者再生とは、継続的な収入を得る見込みはあるけれど、多額の借金のため返済し続けることが困難な「個人」債務者を対象とした、破産をせずに生活再建を行うための制度です。
総債務のうち一定金額を支払い、残りの債務を免除してもらうことができます。また、住宅ローンはあるけれど、家を手放してしまうとその後の生活再建が困難となる場合は、別途
「住宅資金特別条項」を定めることで、生活の基盤である住宅を失うことなく生活再建を図ることもできます。
なお、個人債務者再生には、
「小規模個人再生」と
「給与所得者等再生」の2種類の手続きがあります。
小規模個人再生はどのようなときに利用できますか。
小規模個人再生は、現在抱えている無担保の借金の総額が住宅ローンの残額を除いて5,000万円以内であり、将来において反復継続して収入を得る見込みのあることを要件としています。主に商店主や農家等の個人事業者が対象ですが、サラリーマンなどの給与所得者でも利用できます。
(1)無担保の総債務額5分の1もしくは(2)100万円もしくは(3)清算価値(財産を客観的に評価した額。例えば自動車や保険の解約金など)のうち一番多い金額を、原則3年(特別な事情がある場合は5年まで延長も可能)で返済していくことになります。
給与所得者等再生はどのようなときに利用できますか。
給与所得者等再生は、小規模個人再生と同じ債務総額の制限や継続的収入の見込みという要件の他に、収入の変動の幅が少ないことが必要です。主にサラリーマン等の給与所得者を対象にしていますが、収入の変動の幅が少なければ日当や年俸制で働いている方でも利用できます。
小規模個人再生の(1)から(3)及び(4)収入・家族構成をもとに法律、政令で定められた計算方法によって算出した可処分所得(自由に処分可能な所得)の2年分以上の金額のうち一番多い金額を、原則3年(特別な事情がある場合は5年まで延長も可能)で返済していくことになります。
住宅資金特別条項とはどのようなものですか。
居住用の土地・建物に設定されている抵当権が住宅ローンだけの場合、返済条件を変更する特別の条項を定めることで、生活の基盤である住宅を失うことなく生活を再建していくことができます。この条項を定めた場合、住宅ローンについては全額を支払うことになります。
ただし、担保となっている不動産が住宅以外の店舗や事務所であったり、事業資金などの借入れのために抵当権が設定されている場合には、利用できません。
破産というのはどのようなものですか。
破産とは、多額の借金を抱え支払いができなくなった場合に、自分の総財産を債権者に公平に配当して、債務を整理する手続きです。また、この手続きは、債務者自身の再出発の機会とするという目的もあります。
破産申立は債権者からも債務者からもすることができますが、債務者自身が申し立てる場合を、特に「自己破産」と呼んでいます。
同時廃止とはなんですか。
通常の破産手続きでは、破産宣告と同時に選任された破産管財人が、破産者の持っている財産を換価(現金化)して、債権者ヘの配当を行っていきます。これらすべてが終わると、裁判所は破産終結決定を行い、破産手続きは終結して
免責手続きへと移行します。
しかし、換価して債権者へ配当できるだけの財産を債務者が持っていない場合、または債務者の財産を換価しても手続費用を支出できないことが明らかな場合は、裁判所は破産宣告と同時に破産手続きを廃止して免責手続きへと移行します。これを同時廃止といい、この場合には財産の換価および配当手続きが行なわれないため、破産管財人も選任されません。
破産管財人が選任される管財事件では、自己破産の申立人があらかじめ管財人の報酬を裁判所に納めなくてはならないため費用も高額になり、また手続き終了までの期間も長くなるため、申し立てる債務者には金銭的・精神的な負担がかかります。同時廃止事件、管財事件のどちらとなるか、その見極めは、とても重要なポイントとなります。
免責とはなんですか。
破産手続きでは、破産宣告を受けた後に債務を免責するという決定が確定して初めて、債務者本人は借金の返済義務を免除されることになります。これを免責といいます。破産者から復権したといわれるものです。裁判所から破産宣告を受けただけでは、あなたの借金返済義務がなくなるわけではありません。
しかし、次のような場合、裁判所は免責を認めないこともあります。
(例)借入の理由が著しい浪費やギャンブルの場合
事実と違う借入先や債務額で申し立てた
破産を申し立て免責決定を受けてからまだ7年経っていない
自分の財産を隠していた
など
これらの免責不許可事由があると、破産宣告を受けても免責は認められないことがあります。ですが、問題解決の方法は必ずありますので、債務整理の相談をされる際には、隠しごとをしないで事実をありのままお話ししてください。
破産をするとどうなるのですか。
破産手続きを申し立てると、いろいろ不利益を受けるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。戸籍や住民票にも載りませんし、選挙権がなくなったり、保証人ではない限り家族が返済を迫られることもありません。
破産宣告を受けることで影響を受けるのは、次のような事柄です。
- (1) 破産宣告から免責が確定し復権するまでの間、本籍地の市町村が発行する「身分証明書」に破産者である旨の記載がなされます。しかし、この証明書を取り寄せることはとても少なく、日常生活にはほとんど影響ありません。運転免許証などとは違って、ご自分の「身分証明書」を一度も見たことがない方がほとんどです。
- (2) 財産をすべて失うわけではありません。生活するために最低限必要だと認められた範囲の財産は、手元に残すことができます。ただし、クレジットなど分割払いで購入して支払いが終わっていない品物は、原則として債権者へ返すことになります。
- (3) 会社や仕事を辞める必要はありませんが、法律で破産宣告から免責決定が確定するまでの間は行えないと特に定められた資格や、職種もあります。
例:警備員・生命保険募集人・損害保険代理店・成年後見人など(その他の国家資格も制限を受けます)
テレビなどでよく取り上げられるヤミ金融とはどのようなものですか。
ヤミ金融とは、貸金業の登録・無登録を問わず、法律で定められた金利よりも高い利息を請求したり、保証人でない家族や友人にまで暴力的な取立行為を行なう貸金業者のことを言います。
一般的にヤミ金融の形態としては、次のようなものがあります。
- (1)トイチ業者・03金融
- 「東京都知事(1)」の登録番号を持ち、ダイレクトメールを多用して全国各地に3万円から5万円の小口の貸付けを行い、週1割から5割という違法な利息を請求したり、債務者や家族に対して暴力的な態度で取立てをする業者。
- (2)フクイチ業者・092金融
- 「福岡県知事(1)」の登録番号を持ち、スポーツ新聞やチラシなどには法律に従った金利で広告して融資を勧誘しながら、現実には月1割から週3割等の利息で貸し付ける業者。
- (3)携帯金融・090金融
- 街中の看板やチラシに携帯番号だけを載せ、店舗を持たずに自動車や店先などで貸付を行なう無登録業者。福岡が発祥の地といわれています。
- (4)チケット金融
- 金券(ビール券・商品券等)・チケット(JRカード・航空回数券等)の販売を装ったヤミ金業者。名古屋・大阪が発祥の地といわれていますが、近頃は福岡県内でも被害が生じています。
- (5)押し貸し
- 違法な手段で知った銀行口座へ勝手にお金を振り込んでおいて、法外な利息を請求し、暴力的な取り立てをしてくる業者。
- (6)空貸し
- 貸してもいないのに、名簿や電話帳から知った情報で、電話や郵便による請求だけで返済を迫る業者。
- (7)借金の一本化融資保証詐欺
- 「法定利息で借金を一本化」や「高額融資でほかの借金を返済」などをうたい文句に広告を出し、借り入れの申込者には「返済の記録を残してあなたの信用をつけましよう」とか「高額の融資だから、その分手数料がかかる」などと申込者に先にお金を振り込ませ、実際には融資をしない業者。
- (8)その他
- 年金担保、車金融、家財道具担保などの貸付けを行う業者も違法で、法律の制限を超える高い金利で利益を上げています。手形や小切手を悪用したシステム金融と呼ばれる業者もいます。
ヤミ金の被害にあった場合の対処法を教えてください。
ヤミ金融の多くが、自分達が違法行為をしていることを知っています。そのため、司法書士や弁護士あるいは警察の関与によって、6割程度の業者は取り立てを止めることが多いようです。
しかし、平然と違法な行為を繰り返す業者も1~2割程度います。ヤミ金融との「根競べ」となりますが、必ず解決できますからあきらめないでください。
ご自身でできる具体的な対処法をご紹介しますが、ぜひ早めに司法書士や弁護士に相談してください。
- (1) 警察の協力によるあなたと家族の安全の確保
- ヤミ金融ヘの対応は、福岡県警生活経済課の「ヤミ金対策本部」が中心となっていますが、まずは、お住まいの地区の所轄警察署へ相談に行ってください。
相談の際には、取引の内容や金額、被害にあった状況や相手方の情報であなたの知っていることをメモなどにして持参すると、警察での話もしやすく、警察もすばやく対応してくれます。
県警または所轄の警察署から、近くの交番担当者にあなたの被害内容を充分に説明してもらい、パトロールのときには自宅付近も見回ってほしいと、警ら要請をするとよいでしょう。何かのときすぐに駆けつけてくれるよう依頼し、交番の直通電話番号も教えてもらいましょう。
- (2) ヤミ金融の請求に負けない、あなたと家族の強い意志と態度
- ヤミ金融からの電話にも、勇気を持ってあなたが出てください。あなたが逃げてしまうと、ヤミ金融は、家族や友人などあなたのまわりの人たちに取立行為をしかけてきます。
違法なヤミ金融へは支払う意思のないこと、すでに警察にも相談していることを、はっきり伝えましょう。ヤミ金融はあなたを怖がらせて、あるいは困らせてお金を脅し取ろうと、罵声を浴びせて挑発してくることも多いのですが、相手に対して弱みを見せずに、毅然とした態度で接しましょう。ご家族にも、実情と必ず解決できることをきちんと話して理解を得てください。
ヤミ金対策法とはなんですか。
ヤミ金融による被害が増大しているため、その取締りを強化することを目的に貸金業法及び出資法が一部改正されましたが、これを一般に「ヤミ金対策法」と呼んでいます。主に違法な金利や取立行為等について罰則が強化されましたが、この他に違法な金利を定めた貸付契約は無効であるということや、違法な金利を要求しただけで罪になる「高金利要求罪」も新たに定められました。
詳細は
こちらを参照してください。
ヤミ金融は、金融業者の名を借りた犯罪集団です。ヤミ金融の甘い誘いにのらないことが一番の対処法ですが、もしヤミ金融の被害にあった場合も、支払う義務はありませんので、強い意思をもって対処しましょう。
振り込め詐欺(不当請求)とはなんですか。
貸金業者からの借り入れを返済している、あるいはすでに返し終わった人やその親族に対して「債権者から取立ての依頼を受けた」「債権を譲り受けて自分が債権者だ」「インターネットの有料サイト利用料だ」など、実際には存在しない債権が有るといって突然請求書を送りつけ、金銭を騙し取ろうとするものです。架空請求あるいは不当請求とも呼ばれています。
近頃の顧客名簿・データの流出、名簿屋と呼ばれる業者の介在などが原因と考えられ、これまで一度も借り入れをしたことのない人も、請求を受け被害にあっています。主に、はがきや封書で請求してきますが、携帯電話やインターネットでメールを送ってくることもあります。
対処方法など詳しいことは、ぜひ、このホームページの振り込め詐欺に関するこちらの記載をご覧ください。
【振り込め詐欺のページ】
債務整理を依頼すると、費用はどのくらいかかりますか。
債務整理を司法書士や弁護士に依頼する場合は、裁判所等に支払う実費のほか着手金や報酬が必要となります。具体的な金額は手続き内容や事務所によって異なりますので、相談の際にご確認ください。
生活保護を受けている方や、これに準じるとされる状況の方は、司法書士の書類作成費用や弁護士の代理報酬について、日本司法支援センター(法テラス)が実施する立替制度が利用できます。ただし、予納金などご自身で用意しなければならない費用もありますので、詳細はご相談の際にお尋ねください。