9月16日

 セミナーに、登記局の職員の他に、銀行員が参加してきた。テーマは、「登記の機能」。日本法の実体法と手続き法の関係を不動産の権利と変動、特に担保を中心に話した。具体的には、権利の種類・成立・変動・消滅と、登記の法的関係。それを社会の実例を引きながら説明した。セミナー参加者の銀行員は、現場の人だけあって実状に則した質問を矢継ぎ早に浴びせてくる。それを聞くと、モンゴルは「担保制度」が機能せず、銀行が窮地に追い込まれているらしい。これも「公示制度」が確立していない現状の影響のようだ。「日本では、二重に担保を取ることができるか。その法的関係は」「担保不動産を売ることは出来るか」などの質問が出て、日本法の考え方を説明すると、出席者同士で白熱した議論になったり、ここでもモンゴルの実体規定の不備や、日本法との考え方の遠いが肌で感じられた。中に「登記の代理人の手数料はどのくらいか?」というのもいくつかあった。こういう人達が、近い将来モンゴルで最初の司法書士になるのかもしれない。

 

 モンゴルの民族衣装デール
 手に持っているのは馬乳酒
 アイラグ

 

 

 5時前に終わったので、帰りに国立美術館へ行ってみた。展示物は仏教美術が中心で、仏像などは明らかにインド仏教・チベットのラマ教・中国仏教の影響を受け、アラビア風もある。ここは文化のクロスロードだ。ゆっくり見ていると、5時をとっくに過ぎてしまったが、日本と違って閉館を知らせる館内放送がない。終了時刻はお客さん次第のようだ。

 今日の夕食は、こちらで友達になったダワーの家に招待されている。そろそろ外食にも飽きてきたので、モンゴルの家庭科理を期待してタクシーで出かける。斎藤先生は私に万一の事態が生じた時のためホテルに残るそうだ。彼女の家はアパートの二階なのだが、廊下の電気が真っ暗なのには驚いた。日本と比べると一般家庭への電力の供給量が充分とはいえないようだ。夕食のメニューは羊料理で、アーロール(固くて酸っぱい乳製品)とタラグ(ヨーグルト)の他、馬乳酒(アイラグ)も出された。これは馬の乳を発酵させたアルコール度の低い飲み物で色は白く、味には軽い酸味がある。栄養価が高く、夏場はこれを飲んで食事代わりにする人も多いとか。

 

 ひとしきり団らんの後、記念撮影をしようとすると、ダワーの弟が民族衣装デールに着替えてきた。私にも着ろという。せっかくだから着せてもらって皆でハイポーズ。そればかりか、彼はその後、服を脱いでモンゴル相撲のスタイルも見せてくれた。日本と違って土俵はなく、ルールは膝がついたら負け。500人以上の選手達がトーナメント制で、何組もが同時に試合を始めて徐々に勝ち残っていく。試合の後、勝者は両手を大きく広げて自分の強さを誇示するかのような「鷹の舞い」を舞う。話が盛り上がってすっかり長居をしてしまい、帰りは年代物のベンツでホテルまで送ってもらう。

 
 
もどるつづき