9月19日

 土曜日でセミナーは休みだが、登記局のツォルモン局長のお誘いで、総務課長・通訳のチョローンさんと、テレルジというウランバートル近郊の国立公園に視察旅行に行った。市街地をあっという間に過ぎると、少し草原の国らしい風景になってきた。しかし、穴ぼこだらけの道を運転手が飛ばすので、車窓から優雅に景色を眺めることもできない。30分ほど走ったところで局長の車が止まった。何だろうと思うと、道路脇の斜面に小石を積み上げ枝を立てた塚のようなものがあった。これはオボーと呼ばれるもので、土地の守護神が宿るとされており、人々は車・馬などでここを通りかかると、3回歩いて回りながら旅の安全を祈るのだそうだ。それに、局長によれば、ここでは酒を飲んだりごちそうを食べたりするとのことで、親切にもその用意をしてくれてあった。郷に入っては郷にしたがった後、再び車に乗って目的地を目指す。ほどなく川があり、橋を渡ったのだが、この橋が一見コンクリート風で、実は路面が木、しかも所々の木が抜け落ちている。でも運転手は慣れたもので、右左と車を無事対岸にたどりつかせる。夜はさぞ怖いところだろう。まもなく羊の遊牧風景に出会ったので、車を停めてもらった。

また30分ほど悪路を車に揺られて、目的地のテレルジに着いた。ホテルが数軒と観光客用のゲルが少しあるだけで、日本の観光地によくある、軒を連ねる土産物屋とひしめく観光客の姿が全くない、のんびりした保養地だ。局長が休息用にゲルを一つ借りてくれ、しばしの間モンゴルの風習や、ゲルの生活の話を聞いた。その後昼食をいただきながら、局長がモンゴルの登記の実情や将来の構想などを話し意見交換をした。午後はフリータイムなので、馬に乗ってみた。モンゴルの馬はガイドブックのとおり小さいし、観光用なのでおとなしいらしい。しかも、各自にガイド役が一人つき先導してくれて、川を渡り森に入りと盛りだくさんなシーンを回ってくれた。

 夕食をご馳走になってから、局長一行とは分かれ、帰る途中に、チョローンさんに、星のきれいなツーリストキャンプに連れていってもらった。何と、満天の星で、天の川がきれいに見えるし、人工衛星まで登場して感激の一日だった。

 

 テレルジの観光客用ゲル
 

 テレルジ周辺の牧畜風景

 

 9月20日

 日曜日なので、今日はいつもよりゆっくり起きて、報告会用の写真を撮るため町に出た。手始めに、ホテルの近くのチョイジンラマ寺院に行く。外見は全く中国様式だけど、中はチベット仏教の寺で、インド風・チベット風・日本のお寺でよくみかけるような仏像がごっそり詰まっていて、仏教美術に興味のある方には一押しのスポット。

その後、市内の主な建造物を撮影して美術館に入った。モンゴルの風景画や人々の生活を描いた絵や斬新なモダンアート等を鑑賞し、心がリフレッシュされた気がした。

 夜はホテル近くの劇場で、モンゴルの民族舞踊、ツアムと呼ばれるチベット仏教の仮面踊り、ホーミーという独特なモンゴルの歌を聞いた。ツアムは供養や布教を目的としたもので、演者ラマ僧は悪鬼の仮面や派手な装身具を身につけて踊る。ホーミーは低音のメロディーと同時に、舌・歯・喉・肋骨などを使って高音の伴奏のような音を共鳴させ、一人二役で歌う歌唱法で、日本でもファンが多いということだ。ここで演奏される弦楽器は馬頭琴といい、弦と弓は馬の毛で作られ、棹の頭には馬の彫刻がほどこされている。

 小学校二年生の国語の教科書に出てくる「スーホーの白い馬」という話の原作はモンゴルの昔話なのだそうだ。これは、スーホーという乗馬と歌に秀でた少年が、死んだ愛馬をしのんで、その馬の皮と毛と骨で楽器を作ったという物語である。この伝説の真偽はともかく、馬頭琴は今最もモンゴルで普及している民族楽器なのだそうで、その音色はまるで馬の噺きのような響きがする。

 ショーが終わって外に出ると、切手売りのおじさんがやってきた。斎藤先生は、巧みに5ドルを1ドルに値切るのに成功。

 
 
もどるつづき