チョムロンからドバンへ

4月28日(金)
雲ひとつない快晴で一日が明けた。キャンプ地から東方にマチャプチャレ(6,993m)が逆光の中に黒いシルエットを浮かび上がらせた。写真で良く見かける尖峰ではなく、その名のようにマ−チャ−プチャレ(魚の尻尾)である。風が強いのか山形に沿って雪煙を吹き上げている。谷を挟み対極にある白皚皚としたアンナプルナサウス(7,219m)は朝の光を全身で受けて輝く姿は神々しいばかりである。

アンナプルナサウス
7219m

 7:30キャンプ地を後にして、村の上端から続く長い石段の道に沿って降り、チョムロン・コ−ラの最低部まで降ると、吊橋を渡り又同じくらい山腹を登りテイルチェのバッティまで登り返すと道は水平になり森が深くなった。シヌワ(2,340m)のバッティまで来ると、チョムロンはもう彼方に去り、村を包む長い段々畑は麦秋に輝いている。先に来て休んでいた七、八人のインド人の一行が藤井のカメラを見て集まってきた。

マチャプチャリ
6994m

全員が1人ずつカメラを抱えて触っている。値段を聞くので彼が金額を言うと皆が目を丸くして驚いていた。ヤンプ−がインド人は煩くて嫌いだといった。見ると温厚なヤンプ−にしては珍しく顔をゆがめている。この国の日常生活にいたるまでインド人商人に影響されている鬱積した心の内を垣間見たような気がした。

チョムロンの村

 シヌワを過ぎると道はジャングルに入り、尾根の鼻に出てラリグラスの咲く樹林帯を辿って岩道を行くとクルディガ−ル(2,130m)に着いた。2年前まではここにチェック・ポストがあり軍隊が駐留していたが、今は廃止されて1軒の寂れたバッティが残っている。この頃より又雨となる。今日は昼前から降り出した。バッティの小屋を借りて昼食しているうちに屋根から雨漏りが始まった。見上げると竹で編んだ屋根にビニ−ルシ−トを被せただけの粗末なものである。何気なく見た小屋の隅に光ゴケが蛍光色の淡い光を放っている。

チョムロンの麦秋

思いがけないところで珍しいものを見たものである。昼食する1時間の短い休憩の間に昨日チョムロンのバッティで顔を合わせた多くの国の人々が私達に挨拶をして通り過ぎていった。
 雷も鳴り出し、雨の中を出発する。山腹を捲いてきた山道が下り道となり、樹林帯をさらに降って竹林に入ると、モディ・コ−ラの流れの音が近くなりバンブ−(2,340m)に着いた。

シヌワのバッティ

雨で荷物が濡れ重量が増したのかポ−タ−達が私達よりずっと遅れている。バンブ−から更に樹林帯を緩やかに登り、左の山腹から落ちてくる小さな沢をいくつか横切りながら進むとドバン(2,510m)であった。予定では少し先のヒマラヤホテルまで行く筈であったが遅れたポ−タ−を待ってドバンのキャンプ場にテントを張ることにした。
 夕方からまた雨が激しく降り出した。

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